新しいβ-受容体遮断薬,Arotinolol(S-596)の実験的高血圧症に対する作用
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概要
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新しいβ遮断薬,arotinolol(S-596)の連続経口投与による血圧および心拍数に対する影響を高血圧発症過程deoxycorticosterone acetate(DOCA)-salineラットおよび高血圧既発症の高血圧自然発症ラット(SHR)を使用し,他のβ遮断薬等と比較検討した.また,正常血圧ラットの無麻酔・無拘束状態での経口投与によるβおよびα遮断作用をも検討し,抗高血圧作用との関連性を調べた.実験はいずれの場合も大腿動脈に慢性的に植え込んだカニューレより血圧を直接的に測定した.propranolol 100mg/kg/dayおよびhydrochlorothiazide 10mg/kg/dayの14日間連続投与によりDOCA-salineによる高血圧発症が抑制されたが,S-596 20,50および100mg/kgldayあるいはpindolol 10mg/kg/dayでは明らかな影響が認められなかった.一方,高血圧既発症のSHRの血圧に対してS-596は10mg/kg/day以上の用量で14日間連続投与により血圧を低下きせ,明らかな抗高血圧作用を示した.同様にpropranolol 50mg/kg/day,pindolol 10mg/kg/day,labetalol 100mg/kg/dayおよびhydro-chlorothiazide 10mg/kg/dayでも抗高血圧作用が認められた.この時の投与量はいずれのβ遮断薬の場合でもラットで経口投与によるβ遮断効果が発現する用量よりも高用量を要した.心拍数はS-596,propranololあるいはlabetalol投与により減少し,特にSHRでは明らかであった.薬物の連続投与期間中に投薬後の急性の血圧や心拍数に対する影響をも両モデルで検討したが,S-596は10〜20mg/kg以上の用量でDOCA-salineラットおよびSHRにおいて投与後4〜8時間に降圧作用を示した。この投与量はラットでの経口投与によるα断効果を発現する用量と近接していることから,labetalolと同様にS-596による降圧作用には一部α遮断作用が関与しているものと推測された.なお,SHRではpindololでも同様な急性の降圧作用が認められたが連続投与することにより消失し,propranololの場合にはむしろ昇圧反応が認められた.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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仲谷 坦
住友化学工業株式会社医薬事業部研究部
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原 洋一
住友化学工業株式会社医薬事業部研究所
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中原 創
住友化学工業株式会社医薬事業部研究所
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宮岸 明
住友化学工業株式会社医薬事業部研究所
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仲谷 坦
住友化学工業(株)医薬事業部研究部
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仲谷 坦
住友化学工業株式会社医薬事業部研究所
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宮岸 明
住友化学工業(株)医薬事業部研究部
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原 洋一
住友化学工業(株)医薬事業部研究部
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