新しいβ-受容体遮断薬,<I>dl</I>-2-(3-<I>t</I>-Butylamino-2-hydroxypropylthio)-4-(5-carbamoyl-2-thienyl)-thiazole hydrochloride (S-596) の薬理作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
新しいβ遮断薬,<I>dl</I>-2-(3-<I>t</I>-butylamino-2-hydroxypropylthio)-4-(5-carbamoyl-2-thienyl)-thiazole hydrochloride(S-596)のβ遮断作用,抗不整脈作用およびその他の関連薬理作用をpropranololやpractololと比較検討した.摘出心房と気管標本におけるS-596のadrenalineに対する拮抗作用はpropranololに比較して同等ないしはやや強い効力を示し,麻酔開胸犬の心拍数,心収縮力および血圧では,isoproterenolに対する静脈内投与での拮抗作用はpropranololのそれぞれ13,14および10倍の効力を示した.無麻酔犬で経口投与によるS-596のisoproterenol拮抗作用はpropranololの約5倍であったが,作用発現がやや遅く,持続は長かった.マウスでのmethylchloroform不整脈および犬でのmethylchloroform-adrenaline不整脈に対してS-596は低用量で有効であったが,犬におけるouabain不整脈に対してはpropranololと異なり無効であった。reserpine前処置ラットで,S-596の3〜3000μg/kg静脈内投与では心拍数に対して全く影響を与えなかったが,propranololでは抑制が,practolol投与では増加が認められた.摘出モルモットおよびラット心房に対し,S-596は抑制作用が弱く,3×10<SUP>-5</SUP>〜10<SUP>-4</SUP>g/ml以上の濃度で認められる程度であった.ラットの摘出心房における心筋駆動最大頻度法でのquinidine様作用でもS-596はpropranololやquinidineより弱く,浸潤麻酔や表面麻酔作用でも50%有効濃度は2%以上であり,lidocaine程度の効力を示すpropranololとは異なっていた.以上の成績から,S-596はpropranololより強力なβ-受容体遮断作用を有し,その遮断作用には組織選択性が認められないが,内因性交感神経刺激様作用を示さず,心筋に対する直接的抑制作用が弱く,さらにquinidine様あるいは局所麻酔作用が少ないなど,propranololともpractololとも薬理学的性質を異にする面を有している興味ある薬物であると結論される.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
-
仲谷 坦
住友化学工業株式会社医薬事業部研究部
-
青野 俊二
住友化学工業株式会社医薬事業部研究部
-
原 洋一
住友化学工業株式会社医薬事業部研究所
-
宮岸 明
住友化学工業株式会社医薬事業部研究所
-
佐藤 悦郎
住友化学工業(株)医薬事業部研究部
-
仲谷 坦
住友化学工業(株)医薬事業部研究部
-
宮岸 明
住友化学工業(株)医薬事業部研究部
-
原 洋一
住友化学工業(株)医薬事業部研究部
-
青野 俊二
住友化学工業(株)医薬事業部研究部
関連論文
- リノール酸アミド誘導体のニワトリおよびマウスにおけるコレステロール低下作用
- 新しいβ-受容体遮断薬,Arotinolol(S-596)の実験的高血圧症に対する作用
- 新しいβ-受容体遮断薬,dl-2-(3-t-Butylamino-2-hydroxypropylthio)-4-(5-carbamoyl-2-thienyl)-thiazole hydrochloride (S-596) の薬理作用