Nicorandilの血管弛緩作用 ―Nitroglycerin,Caアンタゴニストとの比較―
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概要
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新規冠血管拡張薬nicorandilの血管弛緩作用を摘出ラット胸部大動脈を用いて検討し,nitroglycerin,Caアンタゴニストと比較した.nicorandilは,norepinephrineで収縮した大動脈標本を強く弛緩し,そのEC50値は2.2×10<SUP>-6</SUP>Mであった.nicorandilのこの弛緩反応は,10<SUP>-5</SUP>M以上の濃度では一過性で,自動運動を伴って回復した.しかし,Caアンタゴニストの前処置により自動運動は消失し,持続性の弛緩反応となった,10<SUP>-4</SUP>M nicorandilは,Caアンタゴニストの有無にかかわらず,30分以上続く弛緩反応を惹起した.nicorandilの弛緩作用機序として,10<SUP>-5</SUP>M以下の濃度では,受容体依存性Caチャンネルおよび細胞内遊離Ca<SUP>2+</SUP>を介する収縮反応に対する抑制作用が考えられ,より高濃度では,膜電位依存性CaチャンネルとCaスパイクに対する抑制作用も関与していることが示唆された.nitroglycerinは,nicorandil低濃度と類似の弛緩作用機序を示した.しかし,nitroglycerinは,nicorandilと異なり,連続適用で耐性を発現した.一方,Caアンタゴニストは,膜電位依存性Caチャンネルを介する収縮を選択的に抑制し,細胞内遊離Ca<SUP>2+</SUP>に依存した収縮には無影響であった.以上の結果より,nicorandilは,nitroglycerinとCaアンタゴニストの作用を一部合わせ持った,比較的持続型の血管拡張薬であることが明らかとなった.また,nicorandilはnitroglycerinとの間に交叉耐性を示さないこと,Caアンタゴニストとの併用により血管弛緩作用は著しく延長することなど,他の冠血管拡張薬との併用効果が期待される薬剤と思われた.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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村松 郁延
福井医科大学薬理学教室
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村松 郁延
福井大学医学部薬理学領域
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村松 郁延
福井医大
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村松 郁延
福井医科大学 麻酔蘇生
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村松 郁延
福井医科大学
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藤原 元始
京都大学医学部薬理学教室
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藤原 元始
京都大学医学部
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村松 郁延
福井医科大学医学部薬理学教室
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