低酸素血症治療薬の一次スクリーニング系 ―トラネキサム酸および塩酸プロカテロールの効果―
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概要
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低酸素血症は脳死ひいては生体の死につながる重篤な状態であるが，有効な薬物は見いだされていない．この原因の一つは，薬物のスクリーニング系が確立していない点にある．われわれはオレイン酸(OA)誘発動脈血酸素分圧(PaO<SUB>2</SUB>)低下モデルを組立て，薬物のスクリーニング系として確立するために必要な基礎的条件について検討し，さらにこの系のPaO<SUB>2</SUB>低下が主に肺血管の透過性亢進によるものか，または気道収縮によるものかを探るために，このスクリーニング系に対するトラネキサム酸および塩酸プロカテロールの影響について調べた．Hartley系モルモットを不動化後人工呼吸下に鎖骨下動脈より採血および血圧測定を行い，薬物を鎖骨下静脈より投与したその結果，1)2時間に11回の採血を行ったがPaO<SUB>2</SUB>，PaCO<SUB>2</SUB>，pH，気道圧，血圧等に有意な変動はみられなかった．2)PaO<SUB>2</SUB>低下に対する換気量の影響を調べた結果，PaO<SUB>2</SUB>低下率はOA投与後10分および15分において過換気群の方が正常換気群に比べて有意に大であった．3)OAの10,15,30および60μl/kg投与により用量に依存したPaO<SUB>2</SUB>低下作用がみられた．4)トラネキサム酸(2g/kg,i.p.)の前処置により，OA誘発PaO<SUB>2</SUB>低下は有意に抑制された．5)塩酸プロカテロール(0.1μg/kg,i.v.)の前処置では，OA誘発PaO<SUB>2</SUB>低下は抑制されなかった以上のことから，この系は適切な換気量やOAの投与量を用いることにより，PaO<SUB>2</SUB>の低下を予防，または低下したPaO<SUB>2</SUB>の回復を促進する薬物の一次スクリーニング系には応用可能であると思われた．また，トラネキサム酸はオレイン酸肺傷害と共通のメカニズムを有する肺傷害の際のPaO<SUB>2</SUB>低下に対し，有効である可能性が示唆された.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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