プロスタグランディンズによる自律神経―効果器伝達の調節機構
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概要
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アドレナリンおよびコリン作働性神経―筋伝達の例としてそれぞれモルモット輸精管およびイヌ気管平滑筋を例にとりプロスタグランディンズ(PGs)やその生合成阻害剤であるインドメタシンの自律神経―効果器伝達に及ぼす効果をわれわれの実験結果を中心に述べ,その作用機構や薬理学的意義について検討した.低濃度のPGs(10<SUP>-10</SUP>〜10<SUP>-8</SUP>M)はモルモット輸精管で記録される興奮性接合電位(e.j.p.)の大きさを著明に抑制する.このとき平滑筋細胞の膜電位,膜実効抵抗,微小接合部電位,e.j.p.のfacilitationや小さな交感神経束(5〜10μm)から記録した活動電位に変化は認められない.すなわち低濃度のPGsの作用点は交感神経末端のノルアドレナリン放出機構にあり[Ca<SUP>2+</SUP>]<SUB>0</SUB>との拮抗作用によりその放出を抑制すると考えられる.しかしインドメタシンはe.j.p.の大きさを増強しないので内因性PGsが交感神経―筋伝達の負の調節因子として重要な役割を果たすとは考えにくい.一方イヌ気管平滑筋で記録されるe.j.p.の大きさは実験経過中に徐々にしかも連続的に減少するが,インドメタシンの投与によりe.j.p.の大きさの減少は停止し,一過性の増大ののち一定の大きさのe.j.p.が記録できる.このとき低濃度のPGsはe.j.p.の大きさを著明に抑制するが平滑筋細胞の膜電位,膜実効抵抗,アセチルコリン感受性に変化は見られない.インドメタシンの連続投与により約半数のイヌで自発的咳が観察され,このとき気管平滑筋では膜脱分極と徐波を伴う自発的咳が観察された.この結果はイヌ気管平滑筋に於て,内因性PGsがコリン作働性神経末端に作用し,アセチルコリンの放出を抑制し,興奮性―神経筋伝達に於て負の調節因子として重要な役割を果たしていることを示し,その生合成阻害によりヒトで観察されるアスピリン喘息様症状が引き起こされたと考えられる.このようにPGsの自律神経―効果器伝達の調節因子としての役割を種および臓器特異性を中心に考察した.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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