活性型ビタミンD<SUB>3</SUB>の生物活性に関する研究(第7報) : 1α-Hydroxycholecalciferolの腎機能に与える影響
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概要
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1α-OH-D<SUB>3</SUB>の腎機能に与える影響を,ラットおよびイヌを用いて,1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>と比較検討し,以下のような結果を得た.<BR>1)絶食絶水下に水負荷を行ったラットにおいて,1α-OH-D<SUB>3</SUB>および1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>は,2.5および25μg/kg p.o.で利尿作用を示した.1α-OH-D<SUB>3</SUB> 0.25μg/kg p.o.では効果が認められなかった.1α-OH-D<SUB>3</SUB>の効果は,1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>のそれに比して遅れて現われたが,時間の経過とともに,両者の差は認められなくなった.CaおよびPの排泄についても,1α-OH-D<SUB>3</SUB>および1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>との間に,上述のような時間的差が認められた.2)尿へのCa排泄の増加は,尿量の増加とは平行しなかった.したがって,尿量の増加をCa動態のみで説明することはできない.3)尿へのP排泄は,Caとは逆に,減少した.1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>では,24hr後に25μg/kg p.o.で,逆に増加し,2.5μg/kg p.o.ではcontrolと同レベルまで回復した.これに対して1α-OH-D<SUB>3</SUB>では,低下傾向を示した.4)GFRおよびTRPは,1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>により著明に増加したが,1α-OH-D<SUB>3</SUB>による増加は,軽度であり,かつ,用量依存性は認められなかった.3)および4)の結果から,1α-OH-D<SUB>3</SUB>と1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>との作用の相違が推察される.5)ビーグル犬に1α-OH-D<SUB>3</SUB>あるいは1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>を0.25μg/kg p.o. 3週間連続投与すると,1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>群でGFRの低下が認められ,投与中止により回復した.この現象は,hypercalcemiaの消長と平行した.腎の血流量に対する作用は,明確には現われなかった.以上のことから,1α-OH-D<SUB>3</SUB>および1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>は利尿作用を有し,短時間ではGFRを上昇させるが,連続投与によりhypercalcemiaを呈すると,腎へのCa沈着にともなってGFRは低下する.これは一種の急性腎不全と考えられるが,投与中止により回復する.腎に対する作用に関しては,1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>の作用が強く現われ,さらに1α-OH-D<SUB>3</SUB>の作用は1α,25-(OH)<SUB>2</SUB>-D<SUB>3</SUB>のそれとはやや異なる部分があると考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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川島 博行
帝人生物医学研究所
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川島 博行
帝人株式会社生物医学研究所
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岡宮 芳明
帝人株式会社生物医学研究所
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上野 光一
帝人株式会社生物医学研究所
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黒住 精二
帝人株式会社生物医学研究所
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橋本 喜信
帝人株式会社生物医学研究所
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MAKITA Tokutaro
帝人株式会社生物医学研究所
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