平滑筋におけるK-収縮曲線のシミュレーション
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概要
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モルモット盲腸紐の40mMK等尺収縮は30μM dantrolene存在下においては,うしろに肩を伴なった時間経過のやや長いphasic収縮とそれらにつづく低いtonic収縮から成ることがみられた.低Caによって全体に張力が低下するとともに肩の発生がおくれて,冒頭に経過の速いphasic収縮,次に経過の遅いphasic収縮,最後に低いtonic収縮の3部分に分離された.低Caののち正常Caにもどして15秒おいてK収縮を生じさせると,冒頭のピーク張力および肩の発生時期は通常の正常Ca下の場合と同様の値まで回復したが,肩の部分の張力は回復不完全であった.0.2μM verapamil存在下のK-収縮は冒頭に肩のない速いphasic収縮,つづいて低いtonic収縮がみられた.おそらく正常条件下の40mMK等尺収縮は経過の速いphasic収縮,遅いphasic収縮,およびtonic収縮から成り,dantroleneはtonic収縮を,verapamilは遅いphasic収縮とtonic収縮を抑制したのではないかと推定された.そこで推定された3成分をそれぞれ仮に対数関数で近似して表わし,その和の曲線をディジタル・コンピューターで描記した.そして関数中の9個のパラメターのうち4個は実際の曲線の図解によって概略の目安値を求めたのち,全パラメターを試行錯誤的に変化させつつ実際の曲線のシミュレーションを試みた.シミュレーションの対象には正常,dantrolene作用50および110分後,verapamil作用5および45分後のK-収縮5例を選んだ.その結果上記の推定どおりに曲線を合成した場合に良好なシミュレーションに成功した.すなわち前記の推定を否定する結果はみられなかった.また推定より少ない個数の成分によった場合,シミュレーションの成功例がなかったのみならず,図形の上からもそれが不可能であると判断された.すなわち対象に選んだ5例の曲線および用いた成分に関する限り,verapamil作用45分後の収縮は1成分,他の4例は2成分から成るものではないと結論された.