新しい遮断薬を用いたエンドセリンの血管収縮に関与するCa<SUP>2+</SUP>流入チャンネルの検討
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概要
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エンドセリン-1(ET-1)は強力な血管収縮性のペプチドであり,その作用は細胞内遊離Ca<SUP>2+</SUP>濃度([Ca<SUP>2+</SUP>]i)の増加を介するが,これは細胞外からのCa<SUP>2+</SUP>流入に依存する。我々は,血管平滑筋において,Ca<SUP>2+</SUP>流入経路として,電位依存性Ca<SUP>2+</SUP>チャンネル(VOCC)の他に,3種類の電位非依存性Ca<SUP>2+</SUP>チャンネル―非選択的陽イオンチャンネルタイプ-1(NSCC-1),タイプ−2(NSCC-2)およびストア作動性Ca<SUP>2+</SUP>チャンネル(SOCC)―が活性化されること,さらに新しいCa<SUP>2+</SUP>チャンネル遮断薬(SK&F 96365およびLOE 908)を導入し,これらのチャンネルを薬理学的に区別できることを示した。本研究では,ET-1による血管収縮におけるこれらのチャンネルの生理学的意義を明らかにするため,ET-1によるラット胸部大動脈平滑筋の収縮および[Ca<SUP>2+</SUP>]iの増加に対するSK&F 96365およびLOE 908の影響を検討した。ET-1による血管収縮および[Ca<SUP>2+</SUP>]iの増加は,細胞外液のCa<SUP>2+</SUP>を除去するとほぼ消失したが,電位依存性Ca<SUP>2+</SUP>チャンネルの阻害薬であるニフェジピンでは全く影響を受けなかった。低濃度(≤0.1 nM)ET-1による収縮および[Ca<SUP>2+</SUP>]iの増加はSK&F 96365またはLOE 908の単独投与によりほぼ完全に抑制された。一方,高濃度(≥1 nM)ET-1の場合は,LOE 908またはSK&F 96365の単独投与により約30−40%および約10%まで抑制された。LOE 908およびSK&F 96365を同時に投与すると収縮および[Ca<SUP>2+</SUP>]iの増加はほぼ完全に消失した。また,ラット胸部大動脈および単離平滑筋細胞を小胞体のCa<SUP>2+</SUP>ポンプの阻害剤であるthapsigarginにより前処理した後にCa<SUP>2+</SUP>を添加すると収縮および[Ca<SUP>2+</SUP>]iの増加が誘発された。この収縮および[Ca<SUP>2+</SUP>]iの増加はSK&F 96365により完全に抑制されたが,ニフェジピンまたはLOE 908では影響を受けなかった。以上の結果より,ET-1によるラット胸部大動脈の収縮は,3種類の電位非依存性Ca<SUP>2+</SUP>チャンネルを介したCa<SUP>2+</SUP>流入によることが明らかとなった。すなわち,低濃度のET-1刺激による血管収縮にはNSCC-2のみが関与するが,高濃度のET-1刺激による血管収縮にはNSCC-1,NSCC-2およびSOCCが関与することを示した。
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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岡本 安雄
京都大学医学部薬理学第一講座
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三輪 聡一
京都大学医学部解剖学教室
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張 暁峰
京都大学医学部薬理学教室
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岩室 康司
京都大学医学部薬理学教室
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眞崎 知生
国立循環器病セ研・バイオ
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眞崎 知生
国立循環器病セ 研
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張 暁峰
京都大学医学部第1薬理学教室
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岩室 康司
京都大学医学部第1薬理学教室
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岡本 安雄
京都大学医学部第1薬理学教室
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三輪 聡一
京都大学医学部第1薬理学教室
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