新しい標的分子としてのGタンパク質βγサブユニット

スポンサーリンク

概要

• 論文の詳細を見る

• 過酸化水素(H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>)でラット新生児の心室筋を処理すると、ERK(extracellular signal regulated kinase)が活性化される。三量体Gタンパク質の所サブユニットを捕捉しエフェクター分子との相互作用を阻害するGタンパク質共役型受容体キナーゼ2(G protein-coupled receptor kinase2, GRK2)のカルボキシル末端(GRK2-ct)を発現させておくと、H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>処理によるERKの活性化は抑制された。また、ホスファチジルイノシトール-3-リン酸キナーゼ(PI3K)によって活性化されるAktもGRK2-ctは抑制した。しかしながら、ホルボールエステル(PMA)によるERKの活性化にはGRK2-ctは影響しなかった。H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>処理によりERKのみならずc-Jun NH<SUB>2</SUB>-teminal Kinase(JNK)やp38が活性化されたにもかかわらず、JNKやp38の活性化はほとんど影響されなかった。これらの結果は、H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>処理によって活性化されるERK、JNKやp38のうちERKの活性化のみがβγサブユニットを介して起こることを示している。これまでsrc、プロテインキナーゼC(PKC)やrasがH<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>処理によるERKの活性化に関与すると報告されていたが、これらシグナル伝達分子の上流に位置するGタンパク質がH<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>により活性化されている可能性が示唆された。GRK2-ctは選択的にERKの活性化のみを抑制することから、βγサブユニットは新たな薬物ターゲットになるかもしれない。

• 社団法人 日本薬理学会の論文

著者

• 黒瀬 等

  九州大学 大学院薬学研究院 薬効安全性学分野

• 長尾 拓

  東京大学 院 薬 薬効安全性

• 長尾 拓

  東京大学大学院薬学系研究科薬効安全性学教室

• 長尾 拓

  東京大学大学院薬学系研究科

• 西田 基宏

  東京大学大学院薬学系研究科

• 黒瀬 等

  東京大学大学院薬学系研究科

• 黒瀬 等

  東京大学大学院薬学系研究科薬効安全性学教室

• 西田 基宏

  東京大学大学院薬学系研究科薬効安全性学教室

関連論文

• Gタンパク質共役型受容体 : TRPCチャネルタンパク複合体形成による心肥大シグナル制御
• 三量体Gタンパク質シグナリングを介した心不全発症の分子機構
• 循環調節 βアドレナリン受容体 (第5土曜特集 最新 G蛋白質共役受容体研究--疾患解明とシグナル制御の新時代) -- (受容体機能の新たな展開)
• 三量体Gタンパク質シグナリングを介した心不全発症の分子機構
• アンジオテンシンIIで誘発される心肥大の分子機構 : TRPタンパク質を巡って
• Relation between Blood Pressure and Plasma Catecholamine Concentration after Administration of Calcium Antagonists to Rats
• 0388 Preconditioningによる低分子量熱ショック蛋白質HSP27のsarcomereへの移行とp38MAP kinaseの役割
• P250 単一心筋細胞の虚血再灌流モデルにおけるl-cis diltiazemの保護効果
• 細胞内免疫法を用いた受容体キナーゼ(βARK1)の機能解析法の確立
• シグナル伝達の解析に用いる各種抗体と一本鎖抗体の作製法
• 竹中登一先生紫綬褒章受章
• 創薬からみた薬理学会
• 選択的β_1, β_2アドレナリン受容体アゴニストの選択性に関与する受容体部位の解析
• 選択的β_2-アドレナリン受容体刺激薬TA-2005の受容体結合部位に関する解析
• 虚血障害とGタンパク質(GPCR(G-タンパク結合型受容体)と薬)
• アデノウイルスを用いた簡便な遺伝子導入発現法
• 創薬のターゲットとしての電位依存性Ca〔2+〕チャネル (最先端創薬--戦略的アプローチと先端的医薬品) -- (先端的医薬品--単一成分に対するアプローチ)
• SII-1. アドレナリン受容体の調節機構 (薬物受容体・情報伝達の分子機構と分子治療学)
• 新しい標的分子としてのGタンパク質βγサブユニット (第27回薬物活性シンポジウム講演要旨集)
• 壁細胞におけるシグナル伝達とプロトンポンプの細胞内輸送
• Gi蛋白質を介する情報伝達系の修飾因子
• 受容体によるGタンパク質活性の調節 (3量体Gタンパク質研究の現状)
• GPCRと酸化ストレス
• 年会総説特集号によせて
• 新しい標的分子としてのGタンパク質βγサブユニット
• 4．受容体によるGタンパク質活性の調節 : 三量体Gタンパク質研究の現状
• AT1受容体を介する心肥大形成におけるTRPCチャネルの役割 (第5土曜特集 レニン・アンジオテンシン系のすべて) -- (アンジオテンシン2受容体の多様性とシグナル伝達)
• TRPCチャネルと心肥大
• イオンチャネルと心疾患--心肥大形成とTRPC-NFATシグナリング (あゆみ イオンチャネル創薬--現状とその可能性)
• βアドレナリン受容体遮断薬の薬理
• アンジオテンシン受容体
• βアドレナリン受容体へのアゴニストの結合とコンフォメーション変化
• アドレナリン受容体--遺伝子改変動物からみたアドレナリン受容体 (第1土曜特集 G蛋白質共役受容体研究の新展開--疾患メカニズムの解析と制御へのあゆみ) -- (各論:受容体機能の新しい展開)
• 心筋におけるシグナル伝達 (特集・心筋研究の最前線)
• アドレナリン受容体のシグナリングと調節
• β受容体結合様式についての相違点(イブニングシンポジウム4 β_2刺激薬の新しい考え方 : partial agonistとfull agonistをどのように使い分けるか)
• βアドレナリン受容体選択的刺激薬の結合部位と作用の解析
• 活性酸素種とGタンパク質
• Gタンパク質共役型受容体の調節機構
• アドレナリン受容体とド-パミン受容体 (脳における情報伝達--神経機能素子と素過程) -- (興奮の伝導と伝達 神経伝達物質受容体)

もっと見る 閉じる

スポンサーリンク