ヘム蛋白質を介する一酸化窒素生成
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概要
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一酸化窒素合成酵素(NOS)はヘム蛋白質であり、その基質はアルギニンである。ここでは、ヘム蛋白質のカタラーゼやミオグロビンを介して生成される一酸化窒素(NO)の血管弛緩反応について解析した。最近の毒物混入事件で用いられたアジ化ナトリウム(azide)は1 nMから10 μMで摘出大動脈を弛緩させ、この有効濃度はミトコンドリア呼吸を抑制するよりもさらに低濃度である。また、亜硝酸ナトリウム(0.1-10 mM)も大動脈を弛緩させた。これらの弛緩反応は、NOS阻害薬では全く抑制されず、guanylate cyclase阻害薬等によって抑制された。azideは血管のcGMP含量を著しく増加させた。NO感受性電極を用いると、azideや亜硝酸を投与すると血管からNOが生成することが確認された。また、azideとカタラーゼ、および亜硝酸とミオグロビンをインキュベートするとNOが生成した。azideの血管弛緩作用の効力と血管のカタラーゼ抑制効力は一致した。また、血管平滑筋にミオグロビンの存在することが免疫組織法で確認された。これらの結果から、azideとカタラーゼおよび亜硝酸とミオグロビンの反応から生成されたNOがcGMPを増加させ、血管平滑筋を弛緩させることが結論される。さらに、hydroxylamineはカタラーゼーNO系を介して血管を弛緩させることが示唆された。生体ではアルギニンからhydroxylamineが生成する場合があることが知られているので、カタラーゼはそのhydroxylamineからさらにNOを生成して血管弛緩作用を引き起こし得ることが考えられる、また、生体内での硝酸代謝が亜硝酸生成に傾いたとき、ミオグロビンを介するNOが血管を弛緩させることが示唆される。このようにNOS以外のヘム蛋白質もNOの病態生理学的役割に関与することが考えられる。
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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百瀬 和享
昭和大学薬学部薬理学教室
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石田 行知
三菱化学生命科学研究所
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石田 行知
シンシナティ大学・医
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石田 行知
三菱化学生命研
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百瀬 和享
国立精神・神経センター精神保健研究所
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百瀬 和享
昭和大学・薬
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百瀬 和享
昭和大学 薬 薬理学
-
百瀬 和享
昭和大学薬学部薬理学
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友田 樺夫
東京医科大学生化学教室
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