牛の射精精液中のNeuraminidase様物質について
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概要
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牛子宮頸管粘液より分離したシアロムコ多糖類に牛射精精液を加え,一定時間37°Cでincubateした後の透析内液中のシアル酸,ガラクトース含量を測定して次の如き興味ある結果を得た.1) 牛子宮頸管粘液より得たシアロムコ多糖類水溶液に一定少量のintact牛射精精液を加えて,37°C一定時間incubateした後の透析内液中結合型-シアル酸含量は,intact精液の代りに,あらかじめ58°C 30分加熱処理した精液を加えて同様な実験を行つた対照液中の結合型-シアル酸含量に比較して,かなりの減少が認められた.2) 上記実験において,精液の代りに高速冷却遠心によつて分離した精子を加えた場合についてもほぼ同様の結果を得た.即ち,intact精子を加えたものでは,あらかじめ58°C 30分加熱処理した精子を加えた対照液に較べてかなりの減少が認められた.3) intact精子+加熱精漿添加の場合と加熱精子+intact精漿添加の場合の透析内液中結合型-シアル酸含量の減少率は前者の方がかなり大であった.4) 上記それぞれの実験において,シアル酸以外のムコ多糖類構成成分例えばガラクトースの試料中の含量は対照液中のそれと較べて大きな変化は認められなかつた.5) intact精液もしくは精子による実験において見出されたこの結合型-シアル酸減少因子とヒアルロニダーゼとの間には何の関係もないことが認められた.6) intact精液とincubate後における結合型-シアル酸含量減少率と精液量,精子濃度および精子活力を総合したものとの間には,ある程度の正の相関関係が認められるようであるが,これについては今後なお検討が必要である.7) 以上の実験結果は,牛の射精精液中-恐らく精子中であろうと思われるが-にはシアロムコ多糖類のシアル酸結合を特異的に開裂させてシアル酸のみを遊離させる酵素様物質-これ迄ある種のvirus,細菌培養炉液中にのみ見出されていた"neuraminidase"様物質-の存在することを暗示しているが,これについての確証は今後さらに詳細な研究を必要とする.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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