尿素の毒性並びにその防除に関する研究 : VIII 第一胃のアンモニア吸収に対するpHの影響の検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
第一胃からのアンモニア吸収に対するPHの影響を検討し,糖蜜の尿素中毒防止作用について説明を試みた.1. 酢酸アンモニウム水溶液を山羊の第一胃に注入すると,第一胃静脈血中のアンモニア態窒素(AN)および揮発性脂肪酸(VFA)の濃度が増加した.KOHで第一胃内のpHを酸性からアルカリ性に変えると,血中のANはさらに増加し,VFAは減少した.2. 体重kg当たり尿素1g(中毒量)に相当する量の酢酸アンモニウムを注入した山羊では第一胃内のpHをKOHで上昇させると,尿素中毒症に類似した中毒症状を表わして死亡した.3. 第一胃内のpHの変化によって,第一胃静脈血中のAN濃度,および第一内容物中のANの拡散率が変化する状態は,アンモニア水中の未解離アンモニア分子濃度がpHによって変化する状態と類似していた.4. 第一胃内容物と,第一胃の動脈血または静脈血との間には,アンモニアのイオンおよび来解離分子の大きな濃度勾配が存在するものと推定された.5. 第一胃からのVFA吸収についても,同様の結果が得られた.6. これらの結果から,第一胃のアンモニアおよびFA(大部分が酢酸)の吸収について,次のような前提をたてた:これらの物質は,イオンおよび未解離分子の形で吸収され,第一胃の内容物と動脈血および静脈血との間のイオンなどの濃度勾配は,これらの吸収の一因として,関係を有する.第一胃内容物中のイオンおよび未解離分子は,各濃度の或る割台で血中に移行する.従って,第一胃静脈血中の濃度は,イオンおよび未解離分子の二つの形で第一胃から吸収された物質の和によって示される.7. この前提に従って,実測値を解析した.その結果第一胃内のアンモニアまたはVFA濃度の変化が,余り大きくない場合には,計算値は実測値に,pH6〜8の範囲内でよく対応した.また,これらの未解離分子は,イオンより吸収されやすいと推定された.8. この前提および推定に従って,糖蜜の尿素中毒防止作用を,明快に説明することができた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
関連論文
- 尿素の毒性並びにその防除に関する研究 : VII 第一胃内容物のpHとアンモニア吸収
- 尿素の毒性並びにその防除に関する研究 : IV. 糖蜜の中毒防止作用の機序
- 尿素の毒性並びにその防除に関する研究 : II 家兎及び山羊に対するアンモニウム塩並びに尿素の毒性
- 尿素の毒性並びにその防除に関する研究 : VIII 第一胃のアンモニア吸収に対するpHの影響の検討
- 高繊維質材料に対する脱リグニンの効果