牛乳中のTemperature-sensitive caseinの2,3の性質について
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概要
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前報において,カゼイン中より,室温で白濁を示すTemperature sensitive fraction (TSF)を調製し,その性質を報告したが,本成分より白濁に関与すると思われる蛋白質,すなわち,Temperature-sensitive (TS-) caseinを分離し,その性質を調べるため本実験を行なった.酸カゼインより,1°CにおけるTEAEカラムクロマトグラフィーによって得られたTSFをコロジオンバックを用いて濃縮し,セファデックスG-100カラム(2.8×47.5cm)によるゲルロ過を行なった.TSFは4つの成分に分離され,TS-caseinは分子量32,000の位置に溶出され,室温で白濁を示したが,他の成分はほとんど白濁しなかった.尿素を含むでんぷんゲル電気泳動では,TS-caseinは泳動の遅い主成分(相対移動度0.22)の外に,これよりやや速い成分が認められた.アミノ酸組成は,全カゼインに比し,プロリンとロイシンの含量が多く(全検出アミノ酸の15.0%と14.06%),これらのアミノ酸の疎水基がTS-caseinミセル形成に関与しているものと思われた.紫外線吸収スペクトルより算出したチロシンとトリプトファンの分子比は1.98であった.アミノ酸組成より分子量を算出すると31,000であった.TS-casein溶液を分光光度計に設備されたセル恒温装置により,毎分1.5°Cまたは3.2°Cの速さで温度を上げるとほぼ同じ濁度-温度曲線を示したが,毎分0.78°Cの時は濁度がやや高かった.温度を段階的に上げると直ちに(約40秒後)濁度は急上昇した.TS-casein溶液(pH7.0)にNaCl, MgCl2,クエン酸ソーダ,CaCl2, 2-メルカプトエタノールを加えても可逆的に濁りを示す性質に著しい変化はなかったが,ホルムアルデヒドを0.13M加えると不可逆となった.凍結にとよる影響は少なく,-17°Cで19日間保存した場合,最高濁度はやや減少した程度であった.以上のことより,TS-caseinミセルの形成は主要カゼインにみられるようにCaなどの電解質によるものではなく,温度を上昇させることのみにより,すみやかにミセルを形成し得る特質を持っていることが明らかとなった.
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