降雨遮断施設を利用した茶園のかん水効果
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概要
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降雨遮断施設を利用して,1974〜77年の間,茶園におけるかん水の効果について検討した。<BR>1. 牧之原赤黄色土で,TRAMの量が約30mm(FCから深さ5cmでのpFが3.0まで)のほ場を使用し,中生品種やまかい(8年生)を供試した。試験区としては,1回のかん水量を,1974年は10,20,30,40mmとし,施設外に自然降水区を設けた。1975〜77年は15,20,25,30mm区と自然降水区とした。かん水点は,30mmかん水区(標準区)の深さ15cmでのpFの値が2.8(1974,1975年)あるいは2.5(1976,1977年)達したとき,全区(自然降水区を除く)に所定量をかん水した。<BR>2. 生育期間(4〜10月)のかん水回数は,1975年は11回,1976年は14回であり,かん水量は標準区で,1975年330mm,1976年は420mmであった。同一時期の降水量は1,537.5mm(1975年),1,666.5mm(1976年,有効雨量574.4mm)であった。<BR>3. 新芽の生育をみると,各茶期ともかん水量の多い区ほど生育が良好であり,特に,30mmかん水区の生9がよかった。<BR>摘採時の出開度をみると,一番茶ではかん水量間に差はないが,二,三番茶でかん水量の多い区の出開きが進んでいた。<BR>4. 収量については,かん水量の多い区ほど多収であった。茶期別にかん水効果をみると,一番茶では収量差が少なく,二,三番茶でのかん水効果が大きい。<BR>5. 芽数,芽重についてみると,一番茶でははっぎりした傾向はみられないが,二,三番茶ではかん水量の多い区の芽数が多く,芽重も重かった。<BR>6. 摘芽について,芽長,葉数,生葉水分(1芯2葉)を調査した結果,かん水量の多い区の芽長は長く,葉数も多かった。生葉水分もかん水量の多い方が多かった。<BR>7. テンシォメータを用いて消費水量を調査した結果,3〜4月は2mm/day前後,5月から梅雨期までは2〜3mm/day,梅雨明けとともに増加し,8月は5溜6mm/day,9〜10月は2卍3mm/dayであった。<BR>8. 土壌水分と消費水量との関係を1975年の生育期間の平均でみると,FC〜pF2.0で4.4mm/day,PFi2.0〜2.3で3.6mm/day,pF2.3〜2.5で2.6mm/day,pF2.5〜2.8で1.9mm/dayとpFの上昇とともに消費水量は減少した。<BR>9. 気象要素と消費水量との関係は,pF値が2.5以下の場合は,日射量,日照時間,平均気温,水面蒸発量との相関が高いが,pF値が2.5より大ぎくなると相関関係はみられなくなる。<BR>10. 土壌水分消費型は,3月から梅雨時までは表層あるいは全層消費型であるが,8月からは下層からの消費が増加する。<BR>11. 茶園でのかん水は,深さ15cmでのpFが2.3に達したときTRAMの量だけかん水するのが適当と思われる。<BR>本試験を行うに当たり,御援助いただいた関東農政局資源課および静岡県農地森林部農地企画課の方々,土壌分析をしていただいた農林水産省茶業試験場平峯重郎部長,当場小川主任研究員,品質調査をしていただいた柴田雄七主幹,本報をとりまとめるに当たって懇切なるご指導を賜った農林水産省茶業試験場茶樹第三研究室青野英也室長,当場鈴木幸隆技監,木村政美普及課長に対し,厚くお礼申し上げる。
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著者
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