チャに寄生する2種のPestalotia属菌
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概要
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1954年,静岡県下でチャ輪斑病の病徴を呈するチャ品種なつみどりの葉および若い茎に2種のPestalotia属菌が寄生しているのが認められた。<BR>そのうち1種は,従来チャ輪斑病の病原菌とされてきたPestalotia theae SAW.と形態的性質がよく一致した。他の1種は沢田(1913,15)が台湾においてチャに弱い寄生性を示すことを報告したPestalotiap palmarumCKE.の沢田による記載にきわめて類似していた。<BR>GUBA(1929,32)はPestalotta属菌の寄主特異性を強調し,本属菌の種の寄主範囲は1種ないし近縁の属に含まれる数種の植物に限定されると述べた。彼によれば,P.palmarum CKE.の寄主植物はヤシ類に限られ,チャを侵すPcstalotia属菌はP.theae SAW.に限られるという。<BR>しかし,GUBAの主張とは相反するが,わが国およびおそらくは台湾において,チャを侵す他種のPestalotia属菌が存在することは事実である。この著者らの菌はP.theae SAW.に比べて,分生胞子が短小であること,有色3細胞のうち上部2胞が他の1胞よりもつねに濃色であること,ならびに付属系の先端が膨大しないことにおいて明らかに異なる。本菌の形態はむしろGUBAによってヤシ類上の菌について注意深く記載されたP.palmarum CKE.の形態に近い。しかし,GUBAの記載によるP.palmarumCKE.は有色細胞の上部2胞が他の1胞よりも「ときに濃色」であること,および付属糸の先端が「しばしば膨大」することにおいて,著者らの菌とはやや異なる。この程度の軽微な差異によって種を分けてよいかどうかはむずかしい問題である。その判断はGUBAの提唱したPestalotia属菌の寄主特異性がどの程度妥当なものであるかにかかってくるであろう。この研究においては,著者らのチャの菌とヤシ類のP.palmzarum CKE.との交互接種試験の成績を欠くため,その点についての考察を進めることができない。よって著者らのチャの菌についての結論的な同定はここでは保留することとしたい。<BR>この未同定のPestalotia sp.とP.tleeue SAW.とによるチャの病徴には全く差がみられず,両者の肉眼判別は不可能である。したがって,今後は両菌による病害を含めてチャ輪斑病(grey blight)の病名をあてることとし,原(1956)が著者らの未同定菌による病害に対して与えたチャ輪紋病の呼称は抹消することを提唱する。
著者
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