豚の消化試験における指標物質としての酸化クロム粉末,酸化クロムペーパーおよび酸不溶性灰分の検討
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概要
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豚の消化率を測定するための,指標物質としての酸化クロム粉末,酸化クロムペーパーおよび酸不溶性灰分(AIA)について,消化試験を実施する上で必要とされる,予備期間と採糞期間の長さを検討すると同時に,これら指標物質法と全糞採取法による消化率の比較を行なった.供試飼料は,子豚育成用飼料(飼料A),豚産肉能力検定飼料(飼料B)および飼料Bにビートパルプを20%配合した飼料(飼料C)の3種類で,供試豚8頭を4頭ずつ2群に分け,1群には飼料をA,B,Cの順に,他群にはA,C,Bの順にそれぞれ10,14,14日間連続して給与した.飼料Bおよび飼料C給与時には,両群とも4頭のうち2頭に酸化クロム粉末を,他の2頭には酸化クロムペーパーを,それぞれ豚産肉能力検定飼料へ0.2%添加した.その結果,糞中の酸化クロム含量が安定するには,酸化クロム粉末法および酸化クロムペーパー法とも飼料切換え後4日を要した.糞中のAIA含量が安定するのに要する日数は,飼料によって異なり,飼料Bでは飼料切換え後4日目でほぼ安定したが,飼料Cでは14日間を通じても安定しない場合が認められた.飼料切換え後,予備期間を4日とし,それ以降における採糞期間と消化率の変動係数との関係についてみると,全糞採取法では各成分の消化率の変動係数とも,採糞期間が3〜4日までは急速に低下した.他方,指標物質法はいずれも採糞期間が長くなると変動係数はわずかに低下の傾向を示すものの,その変化は小さいことから,指標物質法における採糞期間は1〜2日でも十分ではないかと推察された.酸化クロム粉末および酸化クロムペーパーとも,糞中への回収率は94〜97%と若干低かったが,消化率の測定上ほぼ満足すべき回収率であり,全糞採取法との消化率の差は,乾物,粗蛋白質およびエネルギーとも1%程度であった.他方,AIAの回収率は,飼料Bでは99%と良好で各消化率とも全糞採取法とほぼ一致したが,飼料CにおけるAIA含量は,糞中での安定性が悪く,その回収率も低かった.したがって,AIA法による消化率の測定は,飼料の質的内容との関係を考慮した上で,さらに今後の検討が必要と考えられる.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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