肥育豚経営の技術進歩と生産性に関する研究
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概要
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肥育豚経営の発展は,投入諸要因の増加量と生産性の伸び率に依存しており,個別経営の視点からみれば,投入諸要因は頭数規模の関数で表わされ,生産性は労働の物的生産性すなわち技術進歩率で表わすことができる.肥育豚経営における労働の物的生産性を農林省「肥育豚生産費調査」の結果を利用して,昭和35年から46年までの12ヵ年にわたり計測すれば,年率15.2%の伸長率を示している.ただし,この物的生産性の伸長率は,肥育豚経営の頭数規模の拡大による要因と技術構造の変化による要因との2つの生産性向上要因を含んだものである.したがって,省力化手段の面からみると,両者は区別して考えなければならないが,技術構造の変化による生産性の向上効果は頭数規模段階によって異なるものである.このため,ここでは頭数規模による労働節減効果が大きく低下する頭数規模,すなわち販売頭数で100頭段階以上の規模を前提として,物的生産性の上昇率を計測すれば,年率7%の値になる.このほか,規模拡大による生産性の向上割合,すなわち規模を1単位増加した場合の限界生産性は,年度別にみれば上昇傾向を示しており,この頭数規模拡大による限界生産性を年度別にみると,年率14.0%の上昇率を示している.また,労働の物的生産性を構成する諸要因として,投下労働量,増体重,販売頭数,投下資本量,購入飼料費率(飼料費中に占める購入飼料費の割合)を恣意的に抽出して,労働生産性との関連をみれば次のようになる.労働の物的生産性を時系列的にみて上昇せしめてきた主要因は,購入飼料費率の上昇と販売頭数の増大である.しかしながら,購入飼料費率は昭和46年では93.2%となり,これ以上の上昇は困難である.また,販売頭数においても昭和46年では平均46.2頭となり,頭数規模拡大のみによる生産性の向上効果は今後急速に低下して行くことになる.したがって,労働の物的生産性に関する多元回帰分析の結果が示すように投下資本量の物的生産性に対する限界生産性がマイナスであることから,今後は労働に対する代替的経営手段としての資本投下を高め,その効率化を図ることにより物的生産性の向上を期待すべきであろう.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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