肥育豚生産の費用構造に関する経営技術的研究
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概要
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肥育豚経営の生産構造は,肥育豚を能率的に生産するために,労働力,飼料,素豚,豚舎施設などの技術的生産要素が一定の規則の下に結合されたものであり,それらが一定の組織的な構造関係のもとに統一されたときに生産構造となる.これは,経営の物的生産力を湧出するものであり,これを経済的に把握すると費用構造を形成する.したがって,経営の費用構造を把握することにより,経営の物的生産構造を推定し,その合理化のための経営技術を解明することが可能になる.このため,本稿においては肥育豚経営の費用構造を飼養規模との関連で分析し,肥育豚経営の規模拡大を阻害する経営的および技術的諸要因を究明しょうとするものである.ここでは,昭和47年度農林省「肥育豚生産費」を素材として分析を行った.肥育豚生産の短期平均費用を販売頭数規模別に二次関数で求めた結果によれば,販売頭数規模が大きくなるほど,二次曲線の勾配は小さくなり,U字型曲線から円滑な凹型曲線に移行する傾向にある.このことは,頭数規模の大きい階層では一定の生産設備下での操業度すなわち販売頭数の大小による1頭当たり生産費用の変動は小さくなり,養豚設備の拡大により,一定限度内での飼養頭数の変動に対する経営の弾力性が高まることを意味する.長期平均費用曲線より,最低生産費をもたらす販売頭数規模を求めると,それは318になる.また,肥育豚経営全体として最大の利潤をもたらす頭数規模すなわち,限界利潤の零となる販売頭数は579頭である.したがって,前述のように販売頭数規模の大きい階層では操業度によるコストの変化は小さくなるので,養豚の平均的な費用構造を前提とすれば,販売頭数で600頭前後の階層に適正規模が存在することになろう.つぎに,上述の考察は生産費用を一括して検討したものであったが,これを個々の費用勘定科目ごとに販売頭数との関連で分析してみると,生産費用は下記のように4つの科目に分類することができる.すなわち,生産費用は(1) 漸減•逓増費用,(2) 逓減費用,(3) 漸増•逓減費用,(4) 不定費用に区分される.このため,経営技術的には漸減,逓増費用である子豚費,建物費,水道光熱費,獣医師•医薬品費などについて規模拡大によるコスト増加をおさえることが必要である.とくに,もと畜費のコスト低減を図ることが肥育豚経営規模拡大のための最も効果的な経営技術である.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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