新たな血液透析返血経路としての超音波ガイド下brachial vein穿刺法の検討
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概要
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動脈を表在化した血液透析患者の返血用皮静脈が荒廃して穿刺困難になると,グラフトへ変更することが一般的であるが,その後グラフト感染による敗血症が疑われるような場合は,ダブルルーメンカテーテルの留置は感染治療において不利と考えられる.グラフト感染による敗血症を契機にバスキュラーアクセス不全に陥った2症例に対し,リアルタイムエコーガイド下に上腕の皮下深い位置にあるbrachial vein(上腕静脈)を反復穿刺して返血路とすることで,感染が沈静化するまでダブルルーメンカテーテル留置を避けることが可能であった.穿刺は当科の医師3名のいずれかが行い,リニアプローブ付きポータブル超音波装置(iLook25,ソノサイト社)を用いた.その際,(1) 術者はあらかじめ当科で自作したシミュレータで訓練を行った上で,(2) 穿刺前に上腕静脈の走行と上腕動脈・神経との位置関係をエコーにより十分観察し,(3) 穿刺時に血管短軸横断像を描出し,血管穿刺針とエコービームを直交させ,針の輝度を向上させることで皮下における正確な針先位置を同定し,(4) 血管内に針先が到達後もプローブと穿刺針を交互に僅かに進める操作を繰り返し,血管壁損傷を避けつつ,透析針外筒先端が血管内に十分入るように留置した.その結果,2症例合わせて計51回上腕静脈穿刺を行い,透析針外筒留置成功率100%,動脈誤穿刺0%,神経損傷0%であり,重篤な合併症を認めなかった.結論:返血用皮静脈が荒廃した上腕動脈表在化患者等でも上腕静脈は温存されていることが多く,新たなバスキュラーアクセス確立までの間の一時的アクセスとして,エコーガイド下で反復穿刺し返血路として使用することが可能である.特に,すでに感染症を合併している場合にはダブルルーメンカテーテルを留置するよりも感染治療上有利と考える.
著者
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八城 正知
京都市立病院腎臓内科
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鎌田 正
京都市立病院腎臓内科
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落合 美由希
京都市立病院腎臓内科
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大崎 啓介
京都市立病院腎臓内科
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藤澤 奈央
京都市立病院腎臓内科
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門屋 佑子
京都市立病院腎臓内科
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