ウシ体外受精培地へのハイポタウリン添加が受精および胚発生に及ぼす影響
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概要
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実験1では,5 μg/ml ヘパリンを含むBO液を基礎培地(対照区)とし,5 mMカフェイン(Caf区)あるいは10 mMハイポタウリン(HT)(HT区)を添加した受精培地でそれぞれ媒精を行い,媒精後1,3および5時間の精子侵入率の推移を検査した.その結果,3時間でのCaf区とHT区に,対照区より有意に早く精子侵入が観察されたが,5時間では差は認められなかった(P>0.05).しかし,5時間での単精子侵入率は,Caf区は,対照区およびHT区より有意に低い値を示した(P<0.05).これに対して多精子侵入率では,Caf区は,対照区およびHT区より有意に高い値を示した(P<0.05).実験2では,実験1の基礎培地を対照区とし,受精培地へのHT添加濃度が精子侵入率,単精子侵入における前核融合率(媒精開始後18時間目における単精子侵入卵子数に対する雌雄前核が融合している卵子の割合)および胚発生におよぼす影響を比較検討するため,HT添加濃度を0,1,5および10 mMにして5時間媒精を行なった後,5%子牛血清(CS)を添加したTCM199中(卵丘細胞との共培養)で培養を行った(HamanoとKuwayamaの方法).媒精後18時間での精子侵入率は,各濃度間で差は認められなかったが,無添加区に比べ10 mM添加区では,単精子侵入の内,前核未融合率(媒精後18時間における単精子侵入卵子数に対する雌雄前核が融合していない卵子の割合)が有意に低く,前核融合率が有意に高い値を示した(P<0.05).媒精後29時間の卵割率,媒精後72時間の8細胞期以上への発生胚率および媒精日を1日として10日目の胚盤胞への発生率は無添加区に比べてHT添加区で有意に高くなり1 mM添加区より10 mM添加区で有意に高かった(P<0.05).実験3では,5 mMカフェイン(Caf区)および10 mMHT(HT区)での体外受精が精子侵入率,単精子侵入における前核融合率(媒精開始後18時間目における精子侵入卵子数に対する雌雄前核が融合している卵子の割合)および胚発生におよぼす影響を実験2と同じ培養方法で比較した.その結果,実験1と同様にCaf区と比較して,HT区が有意に高い単精子侵入率および低い多精子侵入率を示し(P<0.05),単精子侵入卵における前核融合卵率は,Caf区に比べてHT区が有意に高い値を示した(P<0.05).さらに胚盤胞への発生率,脱出中以上胚盤胞率および8細胞期以上胚に対する胚盤胞の割合においてCaf区に比べてHT区が有意に高い値を示した(P<0.05).以上のことから,体外受精培地へのHT添加は,Caf区に比べて単精子侵入率が有意に高まると共に無添加区に比べて精子侵入および前核融合速度が有意に速くなることが明らかとなった.また,卵割速度が促進され,その結果,胚盤胞への発生率が有意に高くなることが明らかとなった.
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