ウシにおける卵胞刺激ホルモン分泌調節機構に関する研究
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概要
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本研究は,ウシの卵胞発育の調節機序を個体レベルで明らかにする目的で,卵胞から分泌されるインヒビンおよびエストラジオールの卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌調節に果たす役割について検討したものである.主な成果は以下の通りである.1)雌ウシの発情周期では,末梢血中のFSH濃度は、卵胞の発育波の出現に先立ち上昇を示したが,発育波の出現にともない低下した.インヒビンの血中濃度は,発育波の出現に一致した上昇を示した後,主席卵胞の発育過程で高値に達したが,主席卵胞の退行および排卵にともない低下した.一方、過剰な卵胞の発育を誘起すると,血中のインヒビン濃度が顕著な上昇を示した反面,FSH濃度は著しく抑制された.これらの結果から,血中のインヒビン濃度は,分泌源である卵胞の成熟状態および数の変化を反映し,FSH濃度とは負の相関を示すことが明らかとなった.2)黄体期および卵胞期に抗血清の投与によって内因性のインヒビンを不活性化すると,FSHの血中濃度の顕著な上昇が観察された.このことから、インヒビンは発情周期全般にわたってFSH分泌の重要な抑制因子として働いていることが判明した.3)卵胞期に抗エストラジオール血清のみを投与しても,血中FSH濃度の有意な変化は認められなかった.しかし、抗エストラジオール血清と抗インヒビン血清を同時投与すると,FSH濃度の上昇が,抗インヒビン血清の単独投与後に比較して,長時間維持された.これらの結果から,エストラジオールは,インヒビンの作用を増強することによって,FSH分泌の抑制に関与しているものと推察された.以上の実験成績から,雌ウシのFSH分泌はインヒビンを軸として,エストラジオールなどのステロイドホルモンとの共同作用によって調節されていることが明らかとなった.また,卵胞は,インヒビンおよびエストラジオールを情報担体として,下垂体からのFSH分泌を調節することによって,自ら発育を調節しているものと推察された.
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