アカスジカスミカメのコムギ幼苗飼育における孵化率向上のための幼苗切断保存法
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概要
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斑点米の原因として知られるアカスジカスミカメは,通常穂にのみ産卵することから累代飼育が困難である.本研究ではコムギ幼苗を用いたアカスジカスミカメの採卵法およびその保存条件を検討した.雌成虫は第1本葉が出現する播種3日後のコムギ幼苗を与えると鞘葉内部に産卵を行う.24時間の採卵後,苗を根元から切断し湿らせた濾紙を入れたシャーレ内で保存した場合,切断せずに採卵苗を育成した場合に比べて5倍以上の幼虫が孵化した.後者では,第1本葉の伸長に伴って採卵72時間後には半数以上の卵が苗の外部表面に露出したが,そのような卵の孵化率は0%であった.孵化率は相対湿度100%では86.7%であったが,97%以下では大きく低下したことから,乾燥が露出卵の孵化を阻害したことが示唆された.一方,成虫による卵の吸汁は,卵が苗の外部および内部のどちらに位置しても同程度になされたことから,卵の露出による孵化率の低下には成虫吸汁は関係していないものと考えられた.また,採卵時間が長くなるほど成虫吸汁卵の割合が高くなるとともに,成虫密度が高くなるほど雌当たりの孵化幼虫数が減少した.以上のことから,コムギ幼苗による採卵は苗100本に対して雌雄30対,24時間までとし,取り出した苗を切除して高湿度に保たれた容器内に維持することで,多くの孵化幼虫を効率的に得られることが明らかになった.
著者
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長澤 淳彦
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター北陸研究センター
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長澤 淳彦
東北大院・農
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長澤 淳彦
(独)農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター北陸研究センター
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樋口 博也
(独)農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター北陸研究センター
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