黒ゴマのFT-IR/ATRスペクトル法を用いた成分分析
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概要
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本研究では,赤外分光法(FT-IR/ATR法)を用い,生黒ゴマ子葉,残存胚乳,種皮の各部位の赤外吸収スペクトルを測定し,主要なスペクトルパターンを把握するとともに,それがどのような成分に由来しているのかを検討した.この手法を用いた成分分析では,複雑な抽出・分離操作を必要とせず,一粒のゴマを用いて,その主要成分である脂質,タンパク質,糖質を同定することができた.脂質由来バンドは,子葉,残存胚乳で強い吸収として観測された.これらは,1746cm−1 (νC=O)をはじめとして,2924cm−1 (νaCH2),2855cm−1 (νsCH2),1163cm−1 (νC−O)に大きな強度を持つバンドとして出現した.また,3009cm−1には強度は小さいがオレフィンのCH伸縮振動のバンドが明確に現れた.種皮の外側,内側表面においては,上記のバンドはほとんど見られず,油脂が存在するとしてもごく微量であることを確認した.タンパク質に関しては,子葉と残存胚乳で1652cm−1 (AmideI)および1546cm−1 (AmideII)に大きな吸収が観測され,その存在が明らかとなった.また,ランダムコイル構造を持つタンパク質が多く含まれていると考えられる.糖質では,バンドの出現位置や形が各部位で微妙に異なるが,黒ゴマ全部位で1200-950cm−1領域に数本の強い吸収が観測され,繊維を含む多糖類の存在を確認することができた.シュウ酸カルシウムについては,種皮に多く含有するとされているが15),赤外分光法を用いた今回の実験の結果からは,十分な情報を得ることはできなかった.本方法では,小さな一粒の食用種子でも簡単に良質なIRスペクトルが得られる.これを用いて,試料に含まれる主要成分を容易に検出することができるので,他の種子の成分分析への応用が可能である.主要成分だけが検出でき,微量成分に関する情報が得られないことが,この手法の問題点として指摘される.
著者
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北出 かおる
名古屋市立大学大学院システム自然科学研R究科
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片山 詔久
名古屋市立大学大学院システム自然科学研R究科
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桑江 彰夫
名古屋市立大学大学院システム自然科学研R究科
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片山 詔久
名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科
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