バングラデシュ,ベンガル低地中央部における完新世の古環境復元と海水準変動
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概要
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本研究はバングラデシュ,ベンガル低地中央部において,掘削によって現れた完新統露頭の地質調査を行い,古環境の変遷と相対的海水準変動の対応関係の解明に取り組んだものである。露頭の標高は測量によって得られ,-4.1mから+1.9mの範囲である。地層の層相解析,炭素同位体年代測定,花粉分析,珪藻化石分析を行った。 中期完新世以降の相対的海水準変動による堆積環境変遷を反映した,7つの堆積相が識別された。最下部は生物擾乱の著しい砂質干潟相で-3.75m地点からマングローブの花粉化石が検出され,7570-7430cal BPの年代が得られた。潮流の影響を受ける潮間帯が復元され,中期完新世は全般的に海進傾向にあったことが理解される。この上位の泥炭質な塩水湿地相(6670-6410cal BP)は下位の干潟相を削り込むことから,一時的な小海退が推測される。この堆積物中にマングローブの花粉化石や汽水性珪藻化石を含むことから,マングローブ林をともなう塩水湿地が海側に拡大したと考えられる。この小海退後,生物擾乱を受けた泥質干潟相が堆積していることから海進が再び発生したことが認められ,これにともなって潮間帯が広がる海岸平野の発達が復元される。その後4080-4030cal BPの年代が得られた黒色泥炭層が堆積するが,草本の花粉化石が優勢になり,マングローブ林から泥炭質な後背湿地へと変化していったことが推測される。 このようにベンガル低地の中央部にまで,中期完新世の相対的海水準上昇の影響を受けていたことが明らかになった。さらにその海進期間中に小海退がみいだされた。
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