メカニカルミリングによるプロトン伝導性固体酸複合体の作製
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本総合論文では,メカニカルミリング法で作製した新規プロトン伝導性固体酸に注目した。まず,硫酸水素-リン酸水素系セシウム塩複合体の作製と相変化挙動について述べ,次にオキソ酸セシウム塩-ヘテロポリ酸系複合体のプロトン伝導性と水素結合ネットワークの関係について議論する。遊星型ボールミルを用いてCsHSO4とCsH2PO4をメカノケミカル処理することによって,Cs3(HSO4)2(H2PO4)とCs5(HSO4)3(H2PO4)2が生成した。プロトン導電率は温度の上昇によって増大し,180℃で2×10−3 S·cm−1に達し,冷却過程においても高い値を維持した。これは高い導電率を有するCs2(HSO4)(H2PO4)高温相が複合体中に室温でも保持されることが原因である。一方,種々のオキソ酸セシウム塩(Cs2SO4,Cs2CO3,CsHSO4)とリンタングステン酸(H3PW12O40·6H2O: WPA-6)をミリング処理することによって,プロトンの一部がセシウムで置換されたCsxH3−xPW12O40複合体が生成し,化学的耐久性と無加湿プロトン伝導性が向上した。特に,90CsHSO4·10WPA-6(mol%)複合体は,室温から180℃の広い温度範囲で無加湿で高い導電率(3.3×10−3 S·cm−1,100℃)を示すことが分かった。1H MAS NMRから,複合化によってHSO4−とWPAの間に新しい水素結合が形成されることと,その水素結合距離と無加湿100℃における導電率の間に良好な相関性があることが示された。