生殖補助医療に対する意識調査 : ─ 患者と一般市民の比較 ─

概要

論文の詳細を見る
［目的］生殖補助技術はわれわれの想定を遥かに超える速さで進歩しており，患者が高度医療技術への対処に苦慮していることが考えられる．よって，不妊治療を受けている患者をインタビューし，従来のアンケート調査では得られていない諸問題を掘り起こすことを主な目的として調査を行った．また過去の調査との違いが何によるものであるかを検討した．［方法］近畿大学医学部附属病院外来に通院中の不妊治療当事者女性36名（25〜47歳；平均34.9歳）にインタビューを行った．対照として，同年代の近畿圏在住一般市民（女性29名，男性25名）にほぼ同じ内容の自記式アンケートを行った．［結果・考察］不妊治療開始理由として「私が子を望むから」という答えが従来の16〜80％へと飛躍的に増大しており，不妊治療に対する患者の意識が大きく変わっていることが判明した．今後の治療方法として，患者は一般市民よりも体外受精・胚移植や顕微授精に対する抵抗感が少なく，不妊治療による妊娠も「よいこと」と前向きに考えていた．この姿勢は，「将来子どもに不妊治療のことを話すか」について「話す」との答えが40％近くもあることに表れており，約10％の一般市民と好対照であった．また治療の「安全性」を心配する患者も14％と少なく，80％を超える一般市民男性と大きく異なっていた．このような積極性により，AID・卵子提供・借り腹・代理母・養子のいずれに対しても一般市民よりも高い容認度を示していた．一方，患者は自分では解決することのできない不安を抱えており，相談相手も少なく，氾濫する雑誌やインターネット等の情報をどう取り入れるかが判断できない状態であった．患者の多くにとって，聞き手となり，自分に最適な情報を提供してくれるカウンセリングは重要である．必要な情報を整理し，身近な存在として患者の意思決定をサポートしていくために，カウンセリング体制の充実が望まれる．〔産婦の進歩61（2）：81-89，2009（平成21年5月）〕
近畿産科婦人科学会の論文

生殖補助医療に対する意識調査 : ─ 患者と一般市民の比較 ─

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク