温度受容の分子機構 : ―TRPチャネル温度センサー―
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
日本に暮らす私たちは1年を通して四季折々様々な温度を感じて過ごしており,さらに,約43度以上と約15度以下は温度感覚に加えて痛みをもたらすと考えられている.私たちはそれらの温度を感じ,意識的・無意識的にそれに対応して熱の喪失や産生等を行っている.外界の温度受容の場合,末梢感覚神経が温度刺激を電気信号(活動電位)に変換してその情報が中枢へと伝達されると考えられているが,温度受容に関わる分子として,哺乳類では6つのTRPチャネル;TRPV1(VR1),TRPV2(VRL-1),TRPV3,TRPV4,TRPM8(CMR1),TRPA1(ANKTM1)が知られており,それぞれに活性化温度閾値が存在する(TRPV1>43度,TRPV2>52度,TRPV3>32−39度,TRPV4>27−35度,TRPM8<25−28度,TRPA1<17度).TRPV1,TRPV4とTRPM8は,その活性化温度閾値が一定でなく変化しうる.TRPV1の活性化温度閾値は代謝型受容体との機能連関によって30度近くまで低下し,体温が活性化刺激となって痛みを惹起しうる.これらの温度感受性TRPチャネルは感覚神経に多く発現しているが,皮膚表皮細胞等ほかの部位に発現しているものもある.この6つの温度感受性TRPチャネルのうち,TRPV1,TRPV2,TRPA1は温度刺激による痛み受容にも関与していると思われる.身近でありながらほとんど明らかでなかった温度受容のメカニズムが受容体分子の発見ととも明らかになりつつある.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
-
富永 真琴
自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンター(生理学研究所)細胞生理研究部門
-
富永 真琴
自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター
-
富永 真琴
自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンター細胞生理部門
-
富永 真琴
自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター 生命環境研究領域 細胞生理部門
関連論文
- セミナー室 味覚・嗅覚受容体研究の最前線(5)酸味受容のメカニズム--オフ応答を司る分子と生物学的意義
- TRPチャネルとバリア機能 (特集 痒みのメカニズム アップデート)
- カプサイシン受容体TRPV1 (特集 「痛み」の研究と治療の最前線)
- 侵害刺激受容に係わるtransient receptor potential vanilloid 1 (TRPV1)及びtransient receptor potential ankyrin 1 (TRPA1)の活性化,制御メカニズム
- 哺乳類における温度受容の分子機構
- TRPチャネルと侵害刺激受容 (第1土曜特集 難治性疼痛と闘う--研究と治療の最前線) -- (痛みを切る--根底にある分子メカニズム)
- 温度・辛み・酸味センサー:TRPチャネルの多様性 (特集 感覚センサー--生物が外界環境を感じる能力を探る)
- アレルギー疾患における温度感受性TRPチャネルの役割 (特集 アレルギー疾患と自律神経)
- 細胞膜温度センサー--温度を感じる分子たち (特集 細胞感覚とセルセンサー)
- 気道における温度感受性TRPチャネルの機能
- 消化管におけるTRPV1の発現と機能
- TRPチャネルと痛み
- 痛みの受容メカニズム
- 学術 基礎医学から 温度受容のメカニズム
- 温度受容の分子機構 : ―TRPチャネル温度センサー―
- APP-083-PM 膀胱上皮細胞はTRPV4チャネルを発現し機械伸展刺激に応答する : 蓄尿時膀胱伸展におけるTRPV4を介した膀胱上皮からの求心性伝達の解明(総会賞応募ポスター,第97回日本泌尿器科学会総会)
- 酸味受容のメカニズム : オフ応答を司る分子と生物学的意義
- PROFILE
- 消化管の動きを調節する分子センサー
- 痛みとブラジキニン受容体 : 侵害受容器における符号変換と炎症における受容体発現変化
- 2P032 ゼルニケ位相差像の単粒子解析による非選択的カチオンチャネルTRPV4の立体構造(蛋白質(構造・構造機能相関),ポスター発表,第45回日本生物物理学会年会)
- APP-058 新規ディバイス排尿用代謝ケージを用いたマウス排尿における各種パラメーターについて : 野生型マウスとTRPV4ノックアウトマウスとの比較(総会賞応募ポスター,第99回日本泌尿器科学会総会)
- 酸味および辛み受容のメカニズム
- TRPチャネルによる侵害受容機構
- TRPチャネルと感覚 : 痛みと温度感覚に焦点をあてて