減圧残油の水素化分解(第3報) : 水素化熱分解と水素化分解の複合プロセス
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概要
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減圧残油から留出油を高収率で得るプロセスとして, 水素化熱分解と水素化分解を組み合わせた複合水素化分解プロセスを提供し, その有用性についてマイクロオートクレーブを用いて調べた。原料油にはアラビアン·ヘビー油の減圧残油を用い, まず無触媒下, 水素初圧8 MPa, 反応温度430℃ で2 hの水素化熱分解を行い, 次いでその生成液にアルミナ担持硫化ニッケル−モリブデン触媒 (Ni-Mo/Al) を加え水素初圧8 MPa, 反応温度410℃ で2 hの水素化分解を行った。反応液から触媒をろ別した後, 蒸留によって分離した減圧残さに新しい原料油を加えて再度繰り返す反応について, 1循環毎に新触媒に交換する反応と触媒を繰り返し使用する反応をそれぞれ3循環行った。 従来の水素化熱分解あるいは水素化分解単独のプロセスでは留出油収率は最高60 wt% であったが, 当該複合水素化分解プロセスではそれよりもかなり高い留出油収率が得られた。1循環毎に新触媒に交換するプロセスでは, 1循目の留出油収率および減圧残さの収率はそれぞれ85.7 wt% および6.7 wt% であり, 留出油収率は2循目で86.9 wt%, 3循目で87.8 wt% と循環とともに増大し, 減圧残さ中のヘキサン可溶成分が循環に伴ってさらに分解することが示された。触媒を繰り返し使用するプロセスでは, 留出油収率は1循目および2循目で86 wt%, 3循目で69 wt% であり, 3循目で触媒の分解活性の低下が認められた。 使用前触媒 (触媒A) , 減圧残油の直接水素化分解に使用した後の触媒 (触媒C) および水素化熱分解油の水素化分解に使用した後の触媒 (触媒B) の水素化活性, 水素化脱硫活性および水素化脱窒素活性をそれぞれ1-メチルナフタレン, ジベンゾチオフェンおよびカルバゾールを用いて調べた。いずれの反応についても触媒Aの活性が最も高く, 次いで触媒Bであった。当該プロセスで高い留出油収率が得られた理由として, 次の二点が考えられた。 (1) 原料油は水素化熱分解工程で熱的に不安定な結合が分解した後触媒に触れるので, 原料油が直接触媒に触れるプロセスに比べて触媒の活性低下が抑えられた。 (2) 減圧残さ中の不飽和結合の一部が水素化分解工程で水素化されて飽和結合となり, 次の水素化熱分解工程で熱的に分解されやすくなった。
- 社団法人石油学会の論文
- 2003-07-01
著者
-
三木 康朗
産業技術総合研究所
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岩田 好喜
(財)石油産業活性化センター
-
佐藤 剛一
産業技術総合研究所コンパクト化学プロセス研究センター
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島田 広道
(独)産業技術総合研究所
-
本名 幸作
(財)石油産業活性化センター高機能触媒研究室つくば分室
-
島田 広道
産業技術総合研究所環境化学技術研究部門
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荒木 泰博
(財)石油産業活性化センター
-
佐藤 剛一
産業技術総合研 コンパクト化学プロセス研究セ
-
佐藤 剛一
産業技術総合研究所
-
島田 広道
産業技術総合研 つくばセ
-
島田 広道
産業技術総合研究所つくばセンター
-
本名 幸作
(財)石油産業活性化センター
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