ウライ(サケ親魚捕獲柵)上流におけるサケマス産卵後死体の数量
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概要
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最近20年間に主に北アメリカ太平洋岸で行われた研究により、サケマス類の産卵後死体(以下、ホッチャレ)は河川と陸上のさまざまな生物に利用され、水域と陸域の生産性を高めることが明らかになってきた。日本においても河川とその周囲の生態系に及ぼすホッチヤレの影響についての研究が進みつつあるが、今後の進展のためには、ホッチャレの数量と現存量を把握しておく必要がある。筆者らは、1998年から10年間、北海道千歳市千歳川水系のウライ(サケ親魚捕獲柵)上流にある支流・内別川において、サケマス類(大多数のシロサケとごく少数のサクラマス)のホッチャレの数量を調べた。そのうち最初の5年分のホッチャレ数量とその分解消失過程、および底生動物の1種オオエゾヨコエビの繁殖に及ぼすホッチヤレの効果については、すでに報告した。本論文ではその後の5年分のデータを加えて10年間の調査結果をまとめた。ホッチャレの現存量はほぼ秋と冬にピークのある2峰型の季節変動を示し、年による変動も大きかった。この10年間、毎年のホッチャレ現存量の最高値は、秋0.05-10kg/100m2、冬0.4-61kg/100m2であり、既往の研究により河川生物の現存量に影響があるとされている量(野外調査で5kg/100m2、室内実験で0.5kg/100m2をときどき上回ることが明らかになった。ホッチャレ数の年変動も大きかったが、秋のホッチヤレ数は千歳川の日水位最高値と相関していたことから、増水時にウライを乗り越えて上流に上った親魚の一部が内別川で産卵しホッチャレになるものと考えられた。増水時にはウライを越える水位になると同時に、流速の増大により親魚の向流性が刺激され、活発に遡上するものと推察された。冬のホッチャレ数は秋の捕獲親魚数とも千歳川の水位とも相関しないことから、冬に千歳川水系で自然産卵する群の個体数変動を反映しているものと推測された。大きな湖から発する千歳川に比べ、山地から始まる河川では水位変動がはるかに大きいので、ウライを乗り越えて上流で産卵するサケマス類も千歳川水系よりも多いと推測される。従って、入工ふ化放流のため下流のウライでサケ親魚を捕獲している日本においても、河川とその周囲の生態系に及ぼすホッチヤレの影響を研究する必要がある。
- 2009-03-00
著者
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