マウス精子表面のレクチン結合の組織化学的観察
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概要
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各種時間培養したマウス精子を用いて体外受精を行い、精子の受精能保有時間を調べるとともに、精巣上体の頭部、体部および尾部のマウス精子ならびに精巣上体尾部より採取して各種時間培養したマウス精子について、パーオキシターゼを標識した各種レクチンを用いてそれらの結合能を組織化学的に観察し、精巣上体の移動ならびに受精能の獲得と消失に伴うマウス精子表面の複合糖質の変化を検討した。 受精率は、培養後1時間の精子を用いた場合には92.6%であったが、培養時間の経過に伴って有意に低下し、培養後6および12時間の精子を用いた場合には29.3および0%になった。このことから、精巣上体尾部より採取したマウス精子の受精能は、培養1時間以降低下し、培養後12時間では完全に消失することが考えられた。 精巣上体頭部より採取した精子において、Dolichos biflorus agglutinin(DBA)の結合はみられなかったが、先体帽表面にはGriffonia simplicifolia agglutinin Ⅰ(GS-Ⅰ)、Ulex europeus agglutinin Ⅰ(UEA-Ⅰ)およびBauhinia purpurea agglutinin(BPA)の結合が、先体帽と赤道部の表面にはGriffonia simplicifolia agglutinin Ⅱ(GS-Ⅱ)、Triticum vulgaris agglutinin(WGA)、Canavalia ensiformis agglutinin(Con A)、Glycine max agglutinin(SBA)およびArachis hypogaea agglutinin(PNA)の結合がそれぞれみられた。精巣上体の尾部に移動する過程で、先体帽表面にはDBA の結合が、赤道部表面にはGS-ⅠとUEA-Ⅰの結合が、先体後領域の表面にはDBA、SBA とPNA の結合がそれぞれ出現したが、SBA の結合は赤道部の表面からは消失した。一方、培養後0.5および1時間の精子において、先体帽表面からはDBA の結合が、赤道部表面からはGS-Ⅰ、UEA-ⅠおよびCon A の結合が、先体後領域の表面からはPNA の結合がそれぞれ消失し、先体後領域の表面にはCon A の結合が出現した。また、培養後6および12時間の精子において、先体帽表面からはUEA-ⅠおよびBPA の結合が、赤道部表面からはGS-ⅡとWGA の結合が、先体後領域の表面からはCon A の結合がそれぞれ消失し、赤道部表面にはCon A の結合が出現した。Using mouse sperm cultured for various hours, fertilizability of those was examined in vitro. Lectin-bindings on thesurface of head were also histochemically observed in mouse sperm collected from caput, corpus and cauda epididymidesand in those cultured for various hours, in order to examine the changes in glycoconjugates on the surface of mouse spermheads during the movement of epididymis and the course of acquirement and loss of fertilizability.When fertilizable mouse eggs were inseminated with mouse sperm cultured for 1, 6 and 12 hours, the rates offertilization were 92.6, 29.3 and 0%, respectively. The results suggest that fertilizability of mouse sperm decreases after 1hour of culture and disappears at 12 hrs of culture.In mouse sperm collected from caput epididymis, the bindings of GS-Ⅰ, UEA-Ⅰ, BPA, GS-Ⅱ, WGA, Con A, SBA andPNA, and those of GS-Ⅱ, WGA, Con A, SBA and PNA were observed on the surface of acrosomal cap and equatorialsegment, respectively, but that of DBA was not observed on the surface of any part of head. In the course of movement tocauda epididymis, the binding of DBA, those of GS-Ⅰ and UEA-Ⅰ, and those of DBA, SBA and PNA appeared on the surfaceof acrosomal cap, equatorial segment and post acrosomal region of sperm head, respectively, though that of SBA disappearedfrom the surface of equatorial segment.On the other hand, the binding of DBA, those of GS-Ⅰ, UEA-Ⅰ and Con A, and that of PNA disappeared from thesurface of acrosomal cap, equatorial segment and post acrosomal region of sperm cultured for 0.5 and 1 hours, respectively.As for Con A binding, it appeared on the surface of post acrosomal region of sperm cultured for 0.5 and 1 hours.Furthermore, the bindings of UEA-Ⅰ and BPA, those of GS-Ⅱ and WGA, and that of Con A disappeared from the surface ofacrosomal cap, equatorial segment and post acrosomal region of sperm cultured for 6 and 12 hours, respectively, though thatof Con A appeared on the surface of equatorial segment.
- 2010-08-00
著者
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新村 末雄
新潟大学農学部
-
新村 末雄
新潟県農業総合研究所畜産研究センター
-
新村 末雄
新潟大学農学部家畜生産学講座
-
Niimura S
Niigata Univ.
-
大輪 真司
新潟大学大学院自然科学研究科
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