低NaCl濃度の培養液で培養したマウス卵母細胞の囲卵腔の大きさ
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概要
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NaClの濃度を低くした低NaCl-TYH培養液で培養したマウス卵母細胞について、各部位の大きさを計測して通常のTYH培養液で培養した卵母細胞のものと比較し、低NaCl処置した卵母細胞の囲卵腔の大きさが変化する原因について検討した。併せて、低NaCl-TYH培養液で成熟させたマウス卵母細胞の媒精後の多精子侵入の頻度を調べた。胞状卵胞から採取した卵母細胞を、NaClの濃度を95.82、82.15および68.49mMに低下した修正TYH培養液で14時間培養すると、92.6ないし100%が成熟し、成熟率は対照のTYH培養液(NaCl濃度は119.37mM)で培養した卵母細胞の93.8%と相違なかったが、NaClの濃度を44.50mMに低下した培養液で培養したものでは成熟したものはみられなかった。一方、囲卵腔の大きさは、NaClの濃度を95.82および82.15mMに低下した培養液で培養した卵母細胞では5.34および5.40μmであり、対照の卵母細胞の5.40μmと相違なかったが、NaClの濃度を68.49mMに低下した培養液で培養したものでは有意に大きく、6.12μmになった。囲卵腔は、採取直後の卵母細胞では0.28μmあったが、TYH培養液およびNaClの濃度を68.49mMに低下した修正TYH培養液(低NaCl-TYH培養液)で培養したものでは、いずれも培養時間の経過に伴って徐々に拡大した。なお、培養後2、4、6、8および14時間では、囲卵腔は、TYH培養液で培養した卵母細胞に比べ、低NaCl-TYH培養液で培養した卵母細胞で有意に大きかった。透明帯の内径は、採取直後の卵母細胞とTYH培養液でいずれの時間培養した卵母細胞との間で大きく変化しなかったが、低NaCl-TYH培養液で培養した卵母細胞では77.67ないし79.98μmとなり、すべての培養時間で、TYH培養液で培養したものに比べて有意に大きかった。卵母細胞の直径は、TYH培養液および低NaCl-TYH培養液で培養したものの両者で、採取直後の卵母細胞のものに比べて有意に小さくなるとともに、培養後4、6、8、10、12および14時間では、TYH培養液で培養したものに比べて低NaCl-TYH培養液で培養したもので有意に大きかった。透明帯の厚さは、採取直後の卵母細胞とTYH培養液で培養した卵母細胞との間で相違なかった。一方、低NaCl-TYH培養液で培養した卵母細胞の透明帯は、7.58ないし8.70μmあり、培養後14時間ではTYH培養液で培養したものと相違なかったが、培養後2、4、6、8、10および12時間ではTYH培養液で培養したものに比べて有意に薄かった。これらのことから、低NaCl-TYH培養液で培養した卵母細胞で囲卵腔が大きくなるのは、透明帯の内径が大きくなるためであると考えられた。一方、低NaCl-TYH培養液で成熟させた卵母細胞に媒精したところ、受精率は92.7%であり、対照のTYH培養液で成熟させた卵母細胞の92.2%と相違なかったが、多精子侵入率は40.4%であり、対照の卵母細胞の57.6%に比べて有意に低かった。従って、低NaCl濃度の培養液で成熟させて囲卵腔を有意に拡大すると、媒精後の多精子侵入の頻度が有意に低下することが確かめられ、卵母細胞の囲卵腔の大きさと媒精後の多精子侵入の頻度との間には密接な関係のあることが確かめられた。
著者
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新村 末雄
新潟大学農学部
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新村 末雄
新潟県農業総合研究所畜産研究センター
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新村 末雄
新潟大学農学部家畜生産学講座
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上野 紗也香
新潟大学大学院自然科学研究科
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北川 時久
新潟大学大学院自然科学研究科
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佐藤 佳乃子
新潟大学農学部
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新村 末雄
新潟大学農学部家畜生産学教室
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