2004年18号台風後のSPOT HRV-XS画像による北海道羊蹄山の森林風倒被害の抽出と抽出誤差要因の検討
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概要
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北海道羊蹄山を対象に、2004年台風18号襲来後に撮影されたSPOT2号衛星HRV-XSセンサ画像を用いて森林風倒被害(風倒害)の抽出をおこなった。抽出の基礎となる現地状況の情報は同時期に撮影された航空写真を用いて取得した。まず標準的に、スペクトル特性のみに基づきNDVI閾値による一律な抽出を行ったが、様々な誤差要因があることが判明した。誤差要因とは、急峻な地形に起因する地図座標と衛星画像のズレ、森林種別の相違、治山ダムなどの人工地物と森林の混合ピクセル、太陽入射方向と斜面方向の関係の相違、とくに濃い影の存在である。これらのうち可能なものについて、抽出精度を改善する方策を検討した。1.主要な解析に先立ち、HRV-XS画像に対し標高データを用いた精密幾何補正を行った結果、地形図と精密に重ね合わせることができた。通常の幾何補正に対し、補正量は距離にして80mにおよぶ場合があった。この過程は、参照データの取得、および様々な被害抽出の精度改善方法の検討において非常に重要な作業であった。2.航空写真にて現地状況を、森林3区分(トドマツ林、カラマツ林、天然生林)を含む5つの地被区分ごとに、「被害なし」から「壊滅状」被害まで最大6段階の被害程度区分を判読し、スペクトル特性を調べた。風倒害の抽出に従来よく使われてきたBandR(赤)、およびBandRとBandIR(赤外線)を合成した正規化植生指数NDVIは、風倒害地を抽出するには必ずしもよい指数とはいえず、森林種別ごとに最適な抽出方法があることが分かった。しかしながら、様々な森林種別を含む広域画像に対しては、あらかじめ森林種別を厳密に区分する作業が難しいことを考え合わせると、NDVIを指数とした抽出を行うことが第一近似として現実的であると考えられた。また大渓谷の影部や、治山ダムのような人工地物と森林の混合ピクセルが誤抽出を引き起こすことが分かった。3.羊蹄山山体に刻まれた大渓谷の影が大きな誤抽出を起こすことと同様、影ができないまでも太陽光線と斜面方位の関係でNDVI値が変動し誤抽出の可能性が生じることがあきらかになった。このため、ピクセル値の地形補正を検討した。影におけるNDVI値はよく補正されるなど一定の効果が認められたが、過剰補正の傾向が認められた領域も小さくなかった。試行錯誤によって改善できる可能性は残っているが、ピクセル値の地形補正は一つのテーマとなって研究が進展中であることを考えあわせると、この点からの抽出精度向上はまだハードルが高いと考えられる。4.大渓谷の影の問題については、GISで計算した影領域によるマスキングも検討した。このことによって、誤抽出の可能性が高い領域をよく除去することができた。森林域にあり、誤抽出を引き起こすが除去が難しいと考えていた治山ダムのような地物も、GISデータの入手の可能性が残されているので、これによりマスキング領域を作成することで除去ができるかもしれない。
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