現代ムスリム国家における主権と世俗主義批判 : マレーシアにおけるイスラーム主義運動と国家論
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概要
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本稿の目的は近代国家が有する立法権としての主権という概念が近代ムスリム諸国においてどのようにとらえられ、イスラーム的背景を踏まえた上で法制度においてどのように具現化されてきたかをマレーシアの事例を中心に明らかにすることである。マレーシアにおいては主権の問題をめぐって「イスラームの首長」と憲法に規定されているスルタンら、これを推戴するマレー人ムスリムの与党、ウラマーらの野党勢力やイスラーム主義者ら、非ムスリムの世俗主義者らが主権の位置づけをめぐって政治的なかけひきを続けてきた。マレーシアを含む近代ムスリム諸国の多くは、二元的法制度を並立させるハイブリッド国家として成立したが、イスラーム主義者たちは世俗主義の克服と個人、社会、国家の諸問題の包括的な解決策としてイスラームを適用することを求めるとともに主権の帰属を問題視し、「神の主権」の実現を求めるようになった。政府は二元的法制度を存続させながらもイスラーム関係の行政・司法を拡充する「イスラーム化」政策を推進していったが、世俗主義を克服するものではない。
- 2010-02-28
著者
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