油症の皮膚症状 皮膚症状と血中ダイオキシン濃度の関連性について
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概要
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油症が発生した1968年当時は,食用油を加熱する過程で使用されたPolychlorinatedbiphenyls(PCBs)が原因物質であると考えられていたが,その後,研究班によりPCBsだけでなくPolychlorinateddibenzofurans(PCDFs)も原因物質であることが判明した.現在では,油症はPCBsとPCDFsの混合中毒と考えられている.油症発生から5年経過した1973年に患者血液中のPCB濃度の測定が開始された.クロマトグラフィーのパターンにより4つのタイプに分類された.すなわち,Aパターンは油症に特徴的であり,Cパターンは一般人に見られるパターンである.Bパターン,BCパターンはAパターンとCパターンの中間に位置する.測定開始以来,臨床症状と血液中PCB濃度との関連については検討が加えられた.しかしながら,技術的な問題によりPCDF濃度の正確な測定は困難であった.近年測定技術が著しく改善し,血液中PCDF濃度測定が正確に,かつ再現性をもって行われるようになった.PCDFの異性体のうち2,3,4,7,8-pentachlorodibenzofuran(2,3,4,7,8-PeCDF)が,油症におけるダイオキシン類毒性の約70%をしめ,主要な原因物質のひとつであることが判明した.1968年当時の重症患者の血中PCB濃度とダイオキシン類濃度はそれぞれ75μg/glipid,40ng/glipidであると考えられている.これらのPCBやダイオキシン類は糞便や尿,喀疾,皮脂,汗などを通して体外に排泄され,現在では重症患者の血中PCB濃度とダイオキシン類濃度はそれぞれ2.3μg/glipid,0.6ng/glipidに低下している.しかしながら,一般人の濃度と比較すると,依然としてはるかに高い.ダイオキシン類濃度測定は,2001年の福岡県検診で開始され,2002年からは全国で開始された.これにより皮膚症状を含めた臨床症状や検査値と,PCB濃度やダイオキシン類濃度との関連についての検討がはじまった.油症の症状は全身倦怠感や食欲不振,頭痛などの自覚症状からはじまり,ざ瘡様皮疹,爪の色素沈着,マイボーム腺の過剰分泌や眼瞼の腫脹,口腔内の色素沈着,末梢神経症状,女性では月経不順,幼児や新生児には成長遅延などの特徴的な症状が徐々に出現した.油症発生当時は,これらの皮膚症状や粘膜症状が際立っており,診断の際に,非常に重要な所見であった.そのほかの皮膚症状としては,皮膚の乾燥,多汗,爪変形,角化亢進,脱毛などが観察された.これらの症状は年月が経過するとともに徐々に改善している.その一方で,患者が高齢化するにつれ,加齢による変化が加わり,油症による皮膚症状を抽出するのは困難になりつつある.我々は油症発生以来の皮膚症状の年次推移を検討した.また,血液中総PCB濃度,総PCDF濃度と,皮膚症状との関連についても検討を加えた.
- 2005-05-25
著者
-
中山 樹一郎
九州大学医学部附属病院 薬剤部
-
旭 正一
産業医科大学医学部皮膚科学教室
-
旭 正一
産業医大皮膚科
-
旭 正一
産業医科大学皮膚科教室
-
上ノ土 武
九州大学 大学院医学研究院保健学部門環境分子疫学研究室
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