アルケデモスの訴訟活動をめぐって: Xen.Mem.Ⅱ.9についての覚書
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概要
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クセノフォンの『ソクラテスの思い出』のなかに、アルケデモスなる人物が登場する。彼が貧困のなかからみいだされ、事なかれ主義者の富裕者クリトンのために、シュコファンテス(告訴常習者)にたいする対抗訴追をおこして、クリトンを訴訟から保護する逸話である。クリトンとアルケデモスのあいだのバトロネジ的な関係は、近年さまざまな文脈で取りあげられており、ことさらに目新しいものではない。しかしながら、これまで、民主制期のアテナイの市民共同体のなかで、友愛が果たす役割を、法廷弁論について考察してきた筆者にとっては、クセノフォンがアルケデモスとクリトンの関係を、友人の獲得という文脈で語っていることもまた、興味深いもののように思われる。法廷で有力者のために訴訟対策として別件訴追をおこなうという行為は、法廷弁論の言説のうえでは否定的にとらえられていた。ここでは、実際にはシュコファンテスと大差ないアルケデモスの行動が、なぜ好意的に語られ得たのかを考えてみたい。
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