鹿児島県トカラ列島における在来家畜の意義 : 口之島野生化牛保護のための生息調査
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概要
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稀少動物遺伝資源としての口之島野生化牛(以下,野生化牛)を適切に保護するための基礎的知見を得る目的で,2001年における野生化牛の生息頭数を推定するとともに,生息環境を明らかにした.8月と11月に確認した重複のない野生化牛の個体数は32頭であった.また,8月には黒毛,黒毛白斑,褐毛および褐毛白斑の4つの毛色タイプが認められたが,11月には褐毛の個体が見られなかった.野生化牛の群は少なくとも5つ存在し,群のサイズは3~12頭であった.8月に採取したマダニはすべてキチマダニ(Haemaphysalis flava)であったが,11月にはキチマダニとフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)が地点によって個体数に多少の差があるものの,ほぼ同じ割合で採取された.また,マダニ個体数は11月よりも8月で多かった.生息地内にはセランマ温泉の源泉以外,2ヵ所の水場を確認した.以上から,2001年における野生化牛の生息確認頭数は1999年までの頭数よりも減少しており,これには夏季高温寡雨における水場の枯渇,道路のコンクリート舗装に伴う飼料資源(路肩草)の減少,外部および内部寄生虫による感染症の蔓延などが影響しているものと推察された.A survey was conducted to investigate the population and group size of Kuchinoshima feral cattle and their environment in 2001 from the viewpoint of the conservation of rare and endangered animal genetic resources. A total of 32 cattle including adults, the young and suckling calves were found in the southeastern area of the island between August and November, 2001. There were 13 cattle with 4 types of coat color, i.e. black, black and white, brown, and brown and white in August, whereas there was no brown animals in November. The cattle formed 5 groups at least comprising 3-12 individuals. All the ticks collected by dragging a flannel cloth (0.7 × 1 m) on the pasture were identified as unfed larvae of Haemaphysalis flava in August, while Haemaphysalis flava and Haemaphysalis longicornis were almost equally found in November. In addition, the tick population in August was larger than that in November. Two watering places besides the one at Seramma hot spring were found in the habitat. In conclusion, the number of Kuchinoshima feral cattle has been decreased since 1999, which may be influenced by a scarcity of watering places, a decrease in the amount of herbage available caused by extension of a paved road and/or infection of external and internal parasites.SECTION THREE: PEOPLE-NATURE INTERACTIONS: Report 4
- 2003-02-28
著者
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