「「風景」は雑誌ではない」 : 山村暮鳥と詩雑誌『風景』
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概要
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本論は、詩人・山村暮鳥が主宰した詩雑誌である『風景』について、山村暮鳥自身の言及を検討することで、詩雑誌刊行における問題と詩の評価の問題を明らかにするものである。本論では雑誌刊行における経済の問題と、投稿詩の選考の問題に着目した。読者から投稿された詩を掲載するタイプの雑誌においては、投稿された詩の「選考」の問題は、雑誌の売り上げとダイレクトに関わっている。そのため、詩の選考基準・選考体制は、雑誌の存続に関わる重要な要素である。論者は詩雑誌『風景』における、頻繁な規約変更に着目し、それぞれの規約変更が持つ意味を詳細に検討した。その上で、山村暮鳥における詩の「評価観」を明らかにした。山村暮鳥には詩を評価することは「不可能である」という、評の不可能性の意識があり、絶対的な評価は不可能であるという強烈な自覚があったことを明らかにした。しかしながら、限られた紙面という制約のある雑誌制作においては、投稿された詩を何らかの基準で選考していかなければならない。このための葛藤が詩雑誌『風景』の頻繁な規約変更につながったことが考察された。この検討により、大正期の詩雑誌刊行における問題の一端が明らかとなった。
著者
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