新世界との対峙-ニューイングランド文学とバイオリージョナリズム-
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ロングアイランドに住むさる若者が、その地を去るに当たり、宅地の前の浜辺に寝ころぶ。遠くに点滅するフェリーの明かりを眺めながら、この若者は夕闇の中でこの土地の過去のことに想いを馳せる。オランダ人船乗りたちが始めてこの地を目にした時、いまでは高級住宅地と化したこの場所は、見渡す限り樹木と花に覆われた「新世界という鮮やかな緑なす乳房」(9章)の世界であった。隣家の青年ギャツビーについて語る『グレート・ギャツビー』(The Great Gatsby)の語り手ニックは、ロングアイランドを去るにあたり、隣人ギャツビーと新世界アメリカとの関係について思いを巡らす。かつての緑の世界は宅地に姿を変えてしまったが、この高級住宅地に住むことを生涯の夢とした青年ギャツビーにとって、この夢に向かって生きることは、ニックの見るところ、黒々と不気味に広がる「共和国の平野」に「ボート」を漕ぎ出し、「陶酔に満ちた未来」(同前)を目指すことと等価であった。『白鯨』(Moby-Dick)の語り手イシュメイルは、捕鯨について語る。ロングアイランドに隣接するマンハッタンの街に住むこの若者は、街を後にして、捕鯨基地に向かう。青年ギャツビーが「陶酔に満ちた未来」に向けて「ボート」を漕ぎ出したように、青年イシュメイルは、「遥かなるもの」としての鯨を求めて、勇躍「世界の海原」(1章)に船出する。語り手ニックは、ギャツビーの生の在りようを、場所と時間の関係で捉える。共和国アメリカという一個の場所と歴史との関係で眺める。イシュメイルの場合はどうか。捕鯨船やエイハブ船長の在りようは、場所や時間とどのように関わるものなのか。そもそもアメリカ文学において、場所(土地)や時間(歴史)は、どのような意味をもつものなのか。
- 2008-03-21
著者
関連論文
- コディアックとリバビィ-ジョン・バロウズと「場所の感覚」-
- 新世界との対峙-ニューイングランド文学とバイオリージョナリズム-
- メルヴィルを読む : 文体の難解さについて
- ”Ice Before the Equinoctial Heats”-学徒メルヴィル-
- 白衣のフローラ Judith Farr,The Gardens of Emily Dickinson
- 2. "pulsed life create" : Timoleonにおける'Art'の意味(研究発表第一室,日本英文学会第62回大会報告)
- 3.Mardiとpaganism(研究発表第一室,日本英文学会第53回大会報告)
- 自然の聖化 John Gatta,Making Nture Sacred:Literature, Religion, and Enviroment in America from the Puritans to the Present
- アメリカ文学と山紀行 Ian Marshall:Story line:Exploring the literature of the Approlachian Trail
- "Thou, Nature, Art My Goddess" - King Lear and Moby-Dick
- エドワード・アビイと「場所の感覚」
- ジョン・ミュアと「場所の感覚」
- エルムの文化誌
- アンテベラム期の無名作品の復刻
- トレイル文学と「場所の感覚」 : アパラチアン・トレイルと現代アメリカ文学
- アメリカ・インディアンと北米大陸開拓史
- アパラチアン・トレイルとアメリカ文学
- 書評 多文化主義国家のアポリア--Timothy B. Powell, Ruthless Democracy: A Multicultural Interpretation of the American Renaissance
- 古酒と革袋--メルヴィルの旧世界探訪記
- 書評 アメリカに未来はあるか Andrew Delbanco,The Real American Dream:A Meditation on Hope
- 書評 バーモント・パストラル--Frostの詩"Directive"の読み方(John Elder:Reading the Mountains of Home)
- "A True Book,with Some Stretchers"--Huckleberry Finn考
- ホーソーン「天国鉄道」の教材化 : 可能性と補助教材
- Faulknerの"A Justice" : 演習教材としての有効性