羅生門ドリーネにおける樹木の葉温と壁面温度の鉛直構造について
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概要
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1996年夏季に羅生門の第一中間ドリーネ内の樹木の葉や壁面の温度の高度分布や経時変化の観測を行った。以下に得られた結果の主なものを列挙する。ドリーネ内の樹木の葉温は、水平方向に対しては、ほぼ一様な温度成層を示していた。樹木の葉温は、下層部で日変化巾が小さく、上層部で日変化巾が大きくなっていた。樹木の葉温は、高度が高くなるほど、高温を示す鉛直構造をもっていた。特に葉温の鉛直分布は、正午ごろに、高度差約9mの範囲で、温度差約12℃という非常に大きな正の鉛直勾配を示した。樹木の葉温が日最高温度を示す時間は、高度が高いほど早く、高度が下がるに従って遅くなっていた。羅生門の壁面温度は、樹木の葉温の鉛直構造と同じように、高度が高くなればなるほど、高温になっていた。また壁面の温度変動は、葉温の変動に比べて小さい。熱画像中に、周辺の温度と異なるホットスポットが見られた。これは、ドリーネ上部から流れ下りてきた暖かい水が地表面を濡らしている部分であり、ほぼ同じ場所の水のない部分の地表面温度と比べて約6℃も高くなっていた。高度方向に気温や地温に大きい温度勾配がある羅生門ドリーネにおいては、大雨などの場合に、上部から水が流れ下りてきた場合に、地表面温度を上げ、下層の気温を上昇させる可能性があることが指摘された。羅生門ドリーネにおいて、夏季に特異な葉温や壁面温度構造を形成しており、貴重な植物や動物が数多く生息できる温度環境にあることが、熱映像温度計を用いて確認できた。Temperatures of tree's leaves and gate wall were measured in the summer of 1996 at doline. Diurnal fluctuations of leaf temperatures were greater, the higher the position of leaf in the doline, and they showed maximum temperatures later, the deeper the leaf position. The leaf temperature of trees growing in the first collapse doline was uniform in the horizontal direction and had a stable thermal layer. The difference between leaf temperatures at a depth of 20 m and 11 m was about 12℃ around noon. The leaf temperature was always higher at the upper part than at the lower part of the doline throughout the day. Daily fluctuation of wall temperature was small,compared with that of leaf temperature. The vertical profile of wall temperature was similar to that of leaf temperature. The warm water flowing down from the upper part of the doline influenced the soil temperature in the lower part of the doline. The thermal imagery elucidated the peculiar vertical structure of leaf and wall temperature formed in the summer at Rashomon doline.
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