水底の底質,とくにヘドロの特性に関する研究 (第1報)堆積泥中の酸化性イオウ化合物の形態について
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概要
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水底の底質,とくにヘドロの特性を解明する目的で,まず本研究においては,児島湖,中海,八郎潟および岡山県下の瀬戸内海沿いの湾内の底質など,各地の徴粒質の堆積泥を供試して,所含酸化性イオウ含量と形態に重点をおいて,その実態を解明した. なお比較の対照として,徳島市内を流れる今切川の粗粒質の底質を供試して,前記堆積泥との比較を試み,次の結果をえた. 1.H2O,処理によって,堆積泥のpH価は顕著に低下し,PH4以下の強酸性に転じた試料も約半数に達した. これに対して,今切川底質の場合は,H2O2処理によるPH価の低下は,前者に比べて少なかった. 2.堆積泥試料の易酸化性イオウ含量は,337.0~2200.5mg S/100gと,試料間で大差を生じたが,全試料とも,かなり多量の酸化性イオウを含有することが判った. これに対して今切川底質は,14.0~225.8㎎S/100gの範囲にあり,前者に比べて明らかに少なく,酸化性イオウの生成量と底質の粒度組成,とくに粘土含量との問に密接な関係の存在することが判った. 3.堆積泥,今切川底質ともに,酸化性イオウとしてはFeS2が主要部分を構成すること,また児島湖その他数種の底質中には,かなりの量のFeSの存在することを認めた. これに対して酸化性イオウの絶対盤は異常に多いにもかかわらずFeSおよび単体・有機態イオウ含量はきわめて少なく,その大部分がFeS2より成る堆積泥も存在した. 4.酸化性イオウの形態別分析成績から,児島湖の底質中では,有機物の供給が豊富なため,硫酸還元菌の作用によるFeSの生成,さらには単体および有機態イオウを経てのFeS2の生成が現在も活発に進行していること,これに対して中海および波根湖の底質においては,過去に多量に生成したFeSが,現在では安定なFeS2に転化して,平衡状態を保持していることが推察された. これを要するに,嫌気的条件下にあるヘドロ中には,各種のイオウ化合物,主として硫化物が生成集積し,その生成過程および生成物はきわめて複雑であり,さらに硫化物の生成と好気的条件下での変化も,徴生物的および化学的の両作用の総合結果として進行し,かかる反応それ自体が底質の環境条件を左右する重要因子であることが判明した。
- 岡山大学農学部の論文
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