滋賀医科大学における腎移植の経験
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概要
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滋賀医大で過去2年3ヵ月間におこなった腎移植18例につき若干考察すると,症例数が少ないことと,移植後の経過が短いことより成績を論ずる時期ではないが,生体腎移植では全例生着し,満足できると考えている.ただし,cyclosporine投与例ではazathioprine投与例に比し,血清creatinine値が高くcyclosporineの腎毒性が無視できないが,現状では血清の濃度を指標とし維持量を決定しているが,至適投与量は今後検討していかねばならぬ課題である.とくに血清creatinine値が高い例については,azathioprineへの変更も検討すべきであると考えている.死体腎移植例では,生体腎移植と異なり,その成績は惨憺たるもので,肺感染症のため2例を失い,術後管理の困難さを痛感した.死亡例についての考察では死亡例中1例は,2回の急性拒絶反応の治療を受け,2回目のmethylprednisoloneのpulse療法後にaspergillus肺感染症を合併死亡した.拒絶反応時のmethylprednisoloneの多用が,合併症の頻度を増すことはNajarianらも報告しており,大島らも拒絶反応時に免疫抑制剤の多用を抑えることにより生存率の向上をみたと報告している.著者らもこの症例を通じ,死体腎移植例では反復する拒絶反応に対しては治療の中止など一定の基準を設けるべきであると反省させられた.死亡例の他の例は,cytomegalovirus肺感染症を合併し,グロブリン製剤,acyclovirの投与にも反応せず死亡したのであるが,高橋らも報告しているように免疫抑制剤を一時中止し,インターフェロンの使用も試みるべきであったと考えている.つぎに輸血と移植に関して触れると,輸血の既往をもつ患者ではかえって移植成績が良好であると報告され,移植前に積極的に輸血をする施設が多いが,1983年Iwakiらはイヌの実験で輸血時にazathioprineを投与すると生着率がより向上することを報告している.そこで,著者らはLD 4からの生体腎移植例に対し術前計画輸血をおこなっている.donor specific blood transfusionではなく,赤血球濃厚液を使用しているが,使用する血液については今後検討すべき課題であるといえる.なおリンパ球cross match testで陽性化した症例はなかったIn Shiga Prefecture, 378 chronic renal failure patients were registered at the end of 1981. In 1982, the Kidney Transplantation Group, composed of the department of Urology and the 1st division of Surgery, was organized in our hospital and 10 living related renal transplantations and 8 cadaver renal transplantations were performed between July 1982 and October 1984. As immunosuppressants, azathioprine, mizoribine, cyclosporine, prednisolone, methylprednisolone and ALG were used. Azathioprine was used mainly for living transplantation and cyclosporine mainly for cadaver transplantation. ALG was used only for the initial 3 living transplantations. Mizoribine was sometimes used in combination with azathioprine to reduce the dose of azathioprine and reduce its severe side effects. Seven episodes of acute rejection were experienced and all episodes were remitted by methylprednisolone pulse therapy. There were 20 major post-transplant complications in 13 recipients and among them 2 pulmonary infections were fetal (1 from aspergillus infection and 1 from cytomegalovirus infection). The 10 living related kidney transplantation recipients are all well and none have undergone hemodialysis. Three of the 8 cadaver renal transplantation are well without hemodialysis. One patient could not obtain diuresis. In addition to our experience of renal transplantation, the preoperative scheduled blood transfusion with combination of azathioprine administration, was briefly discussed.
著者
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