1914年「アイルランド統治法」の成立
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
イギリスによるアイルランド統治史研究の一環として,本稿においては,いわゆる「アイルランド統治問題」の一応の解決策であると想定しうる1914年「アイルランド統治法」を取り上げ,従来の研究においては殆ど欠落していたところの,グレートブリテンとアイルランド間での財政関係史の観点から,同法成立のもつ歴史的意味を検討していきたい。予め,同法成立の直接的背景についていえば,1905年末に成立し,1906年総選挙で圧勝した自由党政権の下で,1907年恐慌を転換点として,1908年老齢年金導入等により社会政策費が増加し,同時に対独建艦競争により海軍費が増加し,そのために提案されたいわゆる「人民予算」(People's Budget)をめぐる1910年の総選挙で,アイルランド自治を要求する「アイルランド国民党」(Irish Nadonalists)が, (1885年, 1892年総選挙後に続いて)いわばキャステインヴォートを握ったので,新たな(第3次)アイルランド統治法案の作成が必要になり,また1911年「国会法」(Parliament Act)によって,その法案の成立が不可避である状況が出現したのである1)。
- 1999-03-10
著者
関連論文
- 名誉革命後イングランド議会における予算の審議過程(Ⅱ)―対フランス戦争と「軍事歳出予算」及び「1年間援助金譲与法」導入を中心に―
- 名誉革命後イングランド議会における予算の審議過程(1) - 対フランス戦争と「軍事歳出予算」及び「1年間援助金譲与法」導入を中心に -
- 「会計年度」と財政民主主義(I)
- 藤田哲雄著, 『イギリス帝国期の国家財政運営-平時・戦時における財政政策と統計1750-1915年-』, ミネルヴァ書房, 2008年, xii+438頁
- 藤田哲雄著, 『近代イギリス地方行財政史研究 : 中央対地方、都市対農村』, 創風社, 一九九六年六月, 五一一頁, 七、〇〇〇円
- 欧米近現代財政史・国制史研究の一視角(下の1) : イギリス財政史・国制史研究に即して
- 『選挙制度調査勅命委員会報告書(1910年)』分析-「代表原理」の」比較国制史研究の基礎視角設定のために-
- 欧米近現代財政史・国制史研究の一視角(中) : イギリス財政史・国制史研究に即して
- 欧米近現代財政史・国政史研究の一視角(上) : イギリス財政史・国政史研究に即して
- 「会計年度」と財政民主主義(Ⅳ)―近代イギリス予算制度の成立過程に即して―
- 1914年「アイルランド統治法」の成立
- 「会計年度」と財政民主主義(II): 近代イギリス予算制度の成立過程に即して
- 「大不況」期におけるイギリス国庫補助金問題
- 自由主義期におけるイギリス国庫補助金問題
- 王政復古期イングランド議会における予算の審議過程-第二次オランダ戦争と「借入及び割当」条項の導入を中心に-
- 「会計年度」と財政民主主義(3)近代イギリス予算制度の成立過程に即して
- イギリス都市地方財政問題と1895年「土地増価還元賦課金」の成立
- 「会計年度」と財政民主主義(5)近代イギリス予算制度の成立過程に即して
- 「会計年度」と財政民主主義(VI・完)-近代イギリス予算制度の成立過程に即して-
- 「会計年度」と財政民主主義(6・完)近代イギリス予算制度の成立過程に即して