多言語併用教室の言語使用に関する研究 : 日本における加算的バイリンガリズムの実現を目指して(第7章 多言語・多文化社会における日本語教育と国語教育)
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概要
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本稿は、近年の日本語を第一言語(L1)としない言語少数派に属するニューカマーの児童生徒の増加に伴う現場からの報告、つまりL1喪失の影響による深刻な問題(認知的な発達、アイデンティティの確立、家庭内のコミュニケーションなどに関する問題)に関する報告を受け、第二言語(L2)である日本語だけでなく、彼らのL1の育成や習得機会の保障も視野に入れた支援体制の確立のために、どのような教室環境を創ることができるのかを探ることを目的とする。L2だけでなくL1の育成も視野に入れた取り組みは日本では少なく、基礎的研究が急がれている。一方、移民の受け入れなどにより、早くから複数の民族が共生する多言語環境を経験してきた欧米諸国では、児童生徒の多言語育成に関する研究も充実している。そこで本稿では、欧米の多言語併用教室に関する研究がどのように勧められてきたかをレビューする。分析の範囲は、複数の言語が併用されている教室における参加者のやりとりから教室環境を分析している研究に限る。分析の枠組みとして、加算的バイリンガリズムの立場から教室環境を包括的に捉えた欧米における多言語併用教室の研究のレビューを通じて、教室研究では、教室の参加者の間でなされるやりとりによって伝達あるいは構築されているメッセージの解明と学校(教室)環境の範囲に絞ってその要因を解釈するのではなく、社会環境や家庭環境における要因も含めて解釈することが必要であることを指摘する。さらに今後の研究においては、日本のように公教育におけるL1保障が確立されていない状況において加算的バイリンガリズムを目指す上で、新たに共生言語という概念からのアプローチの可能性についても提案する。This study was undertaken to determine the best approach to take in adding new bilingual classrooms in Japan for newcomer children considering their L1 and L2 development. Research on the educational and support systems provided for such children in Japan has been limited. So this paper is based largely on findings from studies in Western countries of classroom interactions among multilingual classroom members. It is specifically focused on examining how classroom interactions change in response to additional bilingualism. It is clear from the research reviewed here that under these circumstances messages are transmitted among bilingual classroom participants by way of interpersonal interactions, which mostly involve shifting languages and using interpretation. Reliance on interpretation plays an important role not only in the school/classroom environment, but also in the social and home environments. So it is clear that multilingual classroom studies in Japan, will need to consider how this sort of symbiosis language can be attained for Japanese native speakers and non-native speakers as they interact in the classroom.
- 日本言語文化学研究会の論文
- 2002-05-24
日本言語文化学研究会 | 論文
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