御手洗水試験流域における粘土鉱物と斜面傾斜角の関係
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概要
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蛇紋岩山地における地形形成と土壌の粘土鉱物組成との関係を明らかにするため,斜面傾斜角と土壌中の粘土鉱物の関係を調べた.蛇紋岩を母岩とする御手洗水流域内の13地点から土壌を採取し,X線回折による土壌中の粘土鉱物分析を行った.また,土壌採取地点においてクリノメーターを用いた簡易な方法により局所的な斜面傾斜角を測定した.X線回折の結果より,この地域の土壌に含まれる粘土鉱物は蛇紋石・緑泥石・タルク・石英であった.斜面傾斜角は最大で33.5°であり,蛇紋岩山地としては比較的急傾斜の地点が見られた.採取地点の斜面傾斜角と粘土鉱物含量との比較により,蛇紋石含量と斜面傾斜角との間に正の相関(相関係数:r = 0.48)が見られた.蛇紋石を多く含む土壌は,同じく蛇紋岩地帯に見られるタルク・緑泥石を多く含む土壌に比べせん断抵抗角が大きいため,蛇紋石が多い土壌からなる斜面では崩壊や地すべりが起こりにくく,平坦化作用の影響を受けにくいと推察される.このことから蛇紋岩山地では,土壌中に蛇紋石を多く含む場合,急傾斜の斜面が形成されうることが示唆された.To elucidate the relationship between topography and soil mineral composition in serpentinite mountains, we investigated soil clay mineralogy and slope gradient. Soil sampling and the measurements of slope gradient were conducted at 13 points in the Ochozu Experimental Watershed where the underlying bedrock predominantly consists of serpentinite. Clay minerals in soil samples were measured with X- ray diffractometer. Despite of the serpentinite surface geology, the results showed that the slope is relatively steep with the maximum slope gradient of 33.5 degree. The clay minerals identified by X-ray diffraction were serpentine, chlorite, talc, and quarts. The contents of serpentine in the soil samples were positively correlated with the slope gradients (correlation coefficient: r = 0.48). The serpentine-rich soil could be less sensitive to planation due to its higher angle of shear resistance than the soil containing talc and chlorite. Our results suggest that serpentine-rich soil could form steep slopes even in serpentinite mountains.
- 九州大学農学部附属演習林,Kyushu University Forestsの論文
著者
-
井手 淳一郎
島根大学大学院生物資源科学研究科
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大槻 恭一
九州大学福岡演習林
-
Otsuki Kyoichi
Kyushu Univ. Fukuoka Jpn
-
Otsuki Kyoichi
Experimental Forest Of Kyushu University
-
Ide Jun'ichiro
Department Of Forest And Forest Products Sciences Graduate School Of Bioresources And Bioenvironment
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