ニホンスモモにおける種子数と胚の発育程度の品種間差及びそれらと果実肥大の関係
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ニホンスモモ(P. salicina)品種群及びその大陸間種間雑種品種群を供試して,種子の発育程度の品種間差とその果実肥大との関係について追究した.供試18品種中,ll品種は1果に1種子を形成した.2種子を形成する果実の割合は‘西田’が最も高かった(1.13種子/1果).完全種子の割合が75%以上だったのは6品種,75%未満50%以上が1品種,50%未満25%以上が2品種,25%未満が9品種であった.粃種子の割合は完全種子と逆の傾向を示した.ニホンスモモ品種における完全種子率は4%~86%であり,ほとんどがかなり低率であった.一方,アメリカナ系雑種品種7品種の完全種子率は7%一96%であり,ほとんどが高率であった.また,これらのほとんどが供試した品種群において上位の発芽率を示した.サイモンスモモ系ニホンスモモの‘ホワイトプラム’は90%の高い完全種子率を示した.ミロバランスモモ(P. cerasifera)と見られる‘オセロ’は最も高い完全種子率(96%)を示したが,P.salicina × P. cerasifera の雑種である‘メスレー’と‘ハリウッド’は供試品種中で最も低い完全種子率(0%)と最も高い粃種子率(それぞれ65%と93%)を示した.完全種子を持つ果実と不完全種子を持つ果実の重さには差がなく,完全種子または不完全種子を持つ果実と粃種子を持つ果実の重さには差があるものの大きな差はなかった.ニホンスモモの大陸間種間雑種における以上のような親和性や調和性は同様な進化(種分化)をたどって来たと推定されるブドウ属(Vitis)のヨーロッパ種(V.vinifera),東アジア種群(V.spp.)および北アメリカ種群(V. spp.)の大陸間雑種と似ていた.Investigation on the difference of seed development and its relation to fruit enlargement were carried out with Japanese plum (P. salicina) cultivars and its intercontinental interspecific hybrid cultivars. in 11 of 18 cultivars used, one seed was produced in one fruit. The rate of fruit with two seeds was the highest in 'Nishida' (1.13seed per fruit). The percentage of perfect seeds was more than 75% for nine cultivars, 75-50% for one, 50-25% for two and less than 25% for nine. The percentages of empty seeds in these cultivars were the reverse inclination to that of perfect seeds. The rates of perfect seeds in Japanese plum cultivars ranged from 4 to 86% and were low in most of the cultivars, whereas those in seven intercontinental hybrid cultivars with Americana plum (P. americana) in their pedigree ranged from 7 to 96% and were high in most of the cultivars. Furthermore, most of the intercontinental hybrid cultivars showed higher germination rates than the other cultivars. 'White Plum', a possible hybrid cultivar from P. salicina × P. simonii, showed high percentage of perfect seeds (90%). Although 'Ocelot', a possible P. cerasifera cultivar, showed the highest percentage of perfect seeds, 'Mesley' and 'Hollywood' that are hybrid cultivars from P. salicina × P. cerasifera showed the lowest rate of perfect seeds (0%) and the highest rate of empty seeds (65% and 93%, respectively). In almost all cultivars, there was no significant difference in fruit weight between fruits with perfect seeds and those with imperfect seeds, whereas there were small difference in fruits weight between fruits with perfect or imperfect seeds and those with empty seeds. These compatibility and incongruity observed in the intercontinental and interspecific hybrid cultivars of Japanese plum resembled those in intercontinental and interspecific hybrid cultivars between Vitis species that speciated in Europe (Caucasus), North America and East Asia as plum did. The result of this study suggested that the treatment to enhance embryo growth and development is required when hybrid seedlings are produced with cultivars forming empty seeds with very high frequencies.
- 2005-10-31
著者
-
白石 眞一
九州大院農学研究院
-
若菜 章
九州大院農学研究院
-
福留 功
九州大農学部
-
Wakana Akira
Department Of Plant Resources Faculty Of Agriculture Kyushu University
-
福留 功
Department Of Plant Resources Faculty Of Agriculture Kyushu University
-
Hanada Nobuaki
Department Of Plant Resources Faculty Of Agriculture Kyushu University
-
花田 信章
Department Of Plant Resources Faculty Of Agriculture Kyushu University
関連論文
- カンキツ果実の生長と成熟時における化学成分変化に関する研究(2) : "大三島ネーブル"と"ハッサク"
- カンキツ果実の生長と成熟時における化学成分変化に関する研究(1) : "宮川早生 "と"宮内伊予柑"
- ニホンスモモにおける種子数と胚の発育程度の品種間差及びそれらと果実肥大の関係
- キウイフル-ツ(Actinidia chinensis Planch.)の有核果及びホルモンで誘起した無核果の生育
- 3倍体無核ブドウの育種 (1) : 2倍体品種と4倍体品種の正逆交配
- Prunus 属植物のアイソザイム分析モモ,スモモ及び近縁種(予報)
- モモとスモモの正逆交雑親和性
- 子葉形態異常を示す'巨峰'自家交配実生に現れる低稔性個体
- 三倍体雑種ブドウにおける無受精小粒種子形成
- ブドウ三倍体雑種の無核果粒の大きさから見た単為結果性の遺伝性の評価
- 三倍体に二倍体または四倍体ブドウを交配して得られた異数体雑種実生の染色体数の頻度
- 三倍体と二倍体または四倍体との交配から得られた雑種の異数性
- 三倍体ブドウを用いた倍数間交配による実生の作出
- 多数の三倍体を用いた異数体ブドウの作出法の検討
- 胚珠・胚培養による異数体ブドウの作出(予報)
- 胚培養による3倍体ブドウの育成
- 3倍体ブドウの特性
- ブドウにおけるPGI,PGMアイソザイムの遺伝子変異とその有用性
- ニホンスモモ, モモおよびそれらの雑種の染色体倍加
- 無受粉及び受粉処理したブドウにおける無受精種子の発達
- 二倍体及び四倍体ブドウ品種における自動的並びに刺激的単為結果性
- ニホンスモモ品種における胚発育不良と摘果によるその改善
- 各種酢ミカン雑種に見られる雄性不稔の遺伝
- 各種酢ミカン雑種の果実の生長に伴う果汁酸含量の変化
- ブドウ(Vitis vinifera L. と V. complex)における縮果病の発生程度とカルシウム、マグネシウム及びホウ素の発生予防効果
- 果樹園における釣り糸防烏線の設置方法とカラスの食害回避効果
- 各種酢ミカン品種の交配には雄性不稔の雑種個体が多出する
- カラタチ'ヒリュウ'の後代に出現する早期開花性
- 日本産野生ブドウのアイソザイム変異
- カラタチ'ヒリュウ'における交雑実生の幼樹開花
- 生食用ブドウの果色と果皮アントシアニンとの関係 : 果色育種への応用
- ブドウにおけるアイソザイム多型と系統発生並びに品種分化に関する研究
- ブドウにおける栽培品種の果皮アントシアニン
- ブドウにおける果実成熟と果皮アントシアニン
- 附属農場における乳牛の乳量および牛乳中成分の変動
- ブドウ交雑次代における果皮アントシアニン組成の変異について
- 温州ミカン幼木の生育ならびに果実の収量と品質におよぼす液肥施用の影響
- ブドウの果色と果皮アントシアニンの関係
- Characteristics of Seedless Berries of Triploid Hybrid Grapes (Vitis vinifera Complex) Derived from Eighteen crosses
- 3x×2xおよび3x×4xから得られたブドウの異数体実生の生育と形態
- GOTアイソザイムのひずみ分離をもとにしたカンキツ品種の自家不和合性遺伝子型の推定
- キウイフルーツ果実の発育と化学成分の変化に及ぼすKT-30処理の影響
- 生長調節物質によるキウイフルーツ (Actinidia chinensis Planch.) 果実の生育促進とそれに伴う品質低下の改善
- キウイフルーツ(Actinidia chinensis Planch.) の有核果及びホルモンで誘起した無核果の生育
- カラタチとカンキツにおける極わい性の遺伝とその育種的利用に関する研究
- カンキツ類のアイソザイム解析による分類学的研究(4) : アスパラギン酸アミノ転移酵素 (Aspartate aminotransferase, AAT) アイソザイム解析によるカンキツ亜科の種,品種の遺伝子型の推定
- カンキツ類のアイソザイム解析による分類学的研究(3) : カンキツの一代雑種におけるアスパラギン酸アミノ転移酵素(Aspartate aminotransferase, AAT) アイソザイム分析
- カンキツ類のアイソザイム解析による分類学的研究(2) : カンキツのアスパラギン酸アミノ転移酵素 (Asparatate aminotransferase, AAT) の遺伝
- カンキツ類のアイソザイム解析による分類学的研究(1) : カンキツ花粉のAAT酵素のアイソザイム分析
- 形態よりみたカキ(Diospyros kaki L.f.) の品種分化に関する研究
- カンキツにおけるアイソザイム対立遺伝子の構造及び進化と系統発生に関する研究(5) : GOT以外のアイソザイムについて
- カンキツにおけるアイソザイム対立遺伝子の構造及び進化と系統発生に関する研究(4) : カンキツのGOTアイソザイム遺伝子型と系統発生
- カンキツにおけるアイソザイム対立遺伝子の構造及び進化と系統発生に関する研究(3) : GOTアイソザイム遺伝子の連鎖ならびに欠失
- カンキツにおけるアイソザイム対立遺伝子の構造及び進化と系統発生に関する研究(2) : GOTアイソザイム,Got-2における重複構造と対立遺伝子の対応関係
- カンキツにおけるアイソザイム対立遺伝子の構造及び進化と系統発生に関する研究(1) : GOTアイソザイム,特にGOT-2,における対立遺伝子,遺伝子重複及び連鎖
- 篠栗放牧場における牧草生産量および放牧牛の牧草摂取量について
- トカラヤギにおける授乳・吸乳行動に関する基礎的研究(1) : 子から親への接近方向について
- トカラヤギの乳房・乳頭の外部形態について
- トカラヤギの生後から1年間における体重の推移について
- 牛乳の乳質改善に関する研究(2) : 乳脂質率の年次変動について
- トカラヤギにおける細断乾草と非細断乾草の採食量と消化率
- 農場における乳牛の泌乳曲線および総泌乳量について(1) : 総泌乳量におよぼす系統および季節の影響について
- デントコーンの栽培法に関する試験
- イタリアンライグラスの乾燥におけるヘイコンディショナーの効果について
- 高原地域における肉用牛生産の現状と課題 (8) : 放牧地域における粗飼料構造
- 高原地域における肉用牛生産の現状と課題 (5) : 放牧による肉用牛生産の経営形態
- 岐阜地鶏の受精率・ふ化率,初産日齢および産卵について
- 高原地域における肉用牛生産の現状と課題 (2) : 子牛販売収入に影響をおよぼす要因について
- 高原地域における肉用牛生産の現状と課題 (1) : 肉用牛生産の経営形態
- 放牧利用による乳雌育成牛の成長について
- 97 97. Studies of the Brain on Scoliosis
- Estimation of the Degree of Self-incompatibility Reaction during Flower Bud Development and Production of Self-fertilized Seeds by Bud Pollination in Self-incompatible Citrus Cultivars
- ヒリュウの自家交配種子に出現する極矮性実生の特性と起源
- ブドウ '巨峰'の含核率の向上について
- カキの萌芽期における晩霜害の品種間差
- ニホンスモモにおける胚の発育
- 果樹におけるカラス害の簡易防止法
- ブドウの生理障害, 特に縮果病に関する調査
- リンゴとナシの相互交雑和合性
- 三倍体または二倍体品種を交配した三倍体リンゴから得た実生の異数性
- 'マスカットベリーA' の交配から得た二倍体個体の雌性および雄性不稔性
- 三倍体を種子親にしたカンキツ異数体, 特にトリソミック個体の作出
- 自家受粉した自家不和合性カンキツ類における花粉管の伸長パターン
- カンキツにおけるGOTイソザイムのひずみ分離と自家不和合性遺伝子の推定
- アイソザイム、制限授粉、及び自家授粉によるカンキツの自家不和合性の検討
- ブドウにおけるGPI,PGMアイソザイム分析 : 対立遺伝子の種特異性と'甲州'の起源
- 乳雄牛の肥育における濃厚飼料の給与程度と増体等の効果について