Raffaelea quercivoraを接種して生残したQuercus crispula苗の水分通導性の変化
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概要
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Mass mortality of oaks, mainly Quercus serrata and Q. crispula, has been found along the Japan Sea since 1980’s. Mortality is associated with wood discoloration and xylem blockage, induced by the fungus Raffaelea quercivora, which is vectored by ambrosia beetle Platypus quercivorus. To reveal the wilting mechanisms of the disease, lower stems of Q. crispula seedlings were inoculated with R. quercivora in summer, and stem hydraulic conductivity of these seedlings which survived the inoculation was investigated with the high pressure flowmeter (HPFM). Hydraulic conductivity around the fungus-inoculation site greatly decreased, especially of seedlings of which Fv / Fm, maximum quantum yield of photosystem II, decreased temporarily. Hydraulic conductivity of distal part from inoculation site or roots, however, did not change. Dye treatment also revealed that blockage of sap-flow occurred only around the inoculation points. These results suggested that the distal part of seedlings was not directly affected by the fungal inoculation, and that wilt was induced by the blockage of sap ascent around the inoculation point. A control seedling with dieback had a much reduced hydraulic conductivity near the dead stem part and in the roots, while the conductivity was maintained in the lower stem. It was suggested that the dieback resulted from lower hydraulic conductivity in the roots, and the wilting mechanism differed from R. quercivora-inoculated seedlingsコナラ,ミズナラを主な被害樹種とするブナ科樹木萎凋病は1980年代から日本海側で流行している。枯死は材変色や木部通導阻害と関連し,養菌性キクイムシPlatypus quercivorusが伝搬する病原菌Raffaelea quercivoraによって起こる。萎凋機構を明らかにするために,ミズナラ苗の主軸下部にR. quercivoraを接種し,生残した苗木の主軸の水分通導性をHPFM を用いて測定した。水分通導性は菌接種部の近くで大幅に低下した。これは特に光合成系II の最大量子収率Fv / Fmが一時的に低下した苗木で顕著であった。しかし菌接種部から離れた部位や根の水分通導性は変わらなかった。酸性フクシン処理で観察した通水阻害は菌接種部周囲のみで発生した。これらの結果は,菌接種は離れた部位には直接影響を及ぼさないこと,萎凋は接種部付近での通水阻害によって生じることを示唆している。先枯れ症状を呈した対照苗では,水分通導性は壊死部位の近くと根で低下したが,主軸下部では維持されていた。先枯れ症状は根の水分通導性の低下により起こり,R. quercivora感染による萎凋機構はこれとは異なることが示唆された
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