自閉的傾向を示す子にとっての生活表現の意味と授業展開の工夫 -図工科における塑像表現活動を通して-
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概要
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知的な遅れはないが自閉的な傾向があり、集団での一斉授業には参加しづらい和君(中学年・男児)が、図工科において生活表現にとりくむことの意味に関する研究報告である。 和君は、コミュニケーション能力に弱さがみられ、また「あったこと(=暮らしの事実)はかかない。」と言ったこともある子である。そんな和君が仲間との学校生活を題材として造形活動にとりくむことで、仲間との生活を意識し、仲間とのつながりを深めることができないだろうか。美術という文化は、もとよりコミュニケーションをその営みに内在させ、しかもそれは単なる伝達ではない、形に込めた意味を読みとった者同士の人間的つながりを生み、さらにそのつながりのうえにたって自己や他者や社会、また自然についての認識を深めさせるものである。 和君は、『4色リレー』(4年・塑像表現)の授業ににこやかに取り組み、仲間に作り方を教えたり完成した作品で“リレーごっこ”をしたりした。和君のそうした姿は、できあがった作品が確かに生活とつながったものであることを示すものだし、日頃はコミュニケーションをとりにくいけれども、仲間との生活を表現する営みの中では自分なりに友だちとの関わりを広げ得ることを感じさせるものであった。そして、表現を進める中で、リレーにがんばることができた自分の姿を肯定的に思い起こし、自分自身の値打ちを認めることにもなったのではないかと考えられた。
- 奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センターの論文
- 2006-03-31
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター | 論文
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