新しい企業理論と現代株式会社の取締役会の役割
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
植竹晃久教授退任記念号本論文は,新しい企業理論をもとに「現代株式会社とは何か」という側面から,取締役会の役割について,明らかにするものである。新しい企業理論とは,現代株式会社に適合的な企業理論であり,人的資源の重要性も加味した企業理論である。この新しい企業理論は,Rajan and Zingalesの「アクセス」(Access)の概念とBlair and Stout の「調停ヒエラルキー」(mediating hierarchy)の概念を援用しつつ不完備契約論をはじめとする企業理論を再構成して導出されるものである。新しい企業理論における企業とは,資源(物的資源や人的資源)の集合体であり,関係特殊投資のネクサス」である。この定義から,企業を捉える際には,資源(resources),関係特殊投資(relationship-specific investment),取引(transaction)の三つの視点が導き出せる。つまり,企業とは,資源の獲得だけでは不十分であり,それを関係特殊投資すなわち企業のために専念して用いられようにしなければならない。そしてそのために,その資源保有者との取引を重視する。この資源,関係特殊投資,取引は相互に関係している。本論文では,この三つの視点の関係によって,取締役会の役割について明らかにする。