日本の従業員持株制度に関する一考察 : その将来像をめぐって (故鈴木清之輔教授追悼号)
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概要
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本稿では,従業員持株制度の定義を「従業員が種々の目的(財産形成のため,資本参加のため等)において,特恵的な条件のもとで自社の株式を購入ないしは取得する制度」とする。分析にあたっては,日本については,自社の従業員だけを対象にした狭義の従業員持株制度だけではなく,取引先に株式を持たせたり,子会社に準ずる関係を有する企業の従業員に親会社に相当する企業の株式をもたせる,広義の従業員持株制度を対象とし,米国の従業員持株制度については,ESOPを対象とする。このような従業員持株制度の定義と対象のもと,本稿では次の二つの問題を検討している。すなわち,問題(1)日本の現行の従業員持株制度は,いわゆる日本的経営の特徴と整合性を有しているかということ,問題(2)日本的経営に変化が見られると日本の現行の従業員持株制度はどのように変化するか,ということである。これら二つの問題の検討のために,日本的経営の特徴について小括し,それとの関わりで現行の従業員持株制度の意義について検討していく。そして,現在日本的経営が変化しつつあること,さらにその変化の方向性が一般的には米国型の経営になりつつあるとされていることを示す。そして日本の従業員持株制度の将来像を探るべく,日米の制度比較を行う。最後に,米国型の経営が日本には容易に浸透しにくい旨を述べ,それを踏まえて,日本の従業員持株制度には福利厚生制度の大幅な見直しを行うことによって,現行の従業員持株制度,ストック・オプション,米国型の従業員持株制度などを企業がそれぞれの状況に応じて自由に選択できるシステムが必要になることを示す。
- 慶應義塾大学の論文
- 2000-11-25