罹病期間20年の1'トレット'症候群に対する行動療法(原著)
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概要
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過去に受けた治療的試みがいずれも無効に終わった,トレット症候群を患った26歳の独身女性に1週間の薬物療法を先行させた後に行動療法を適用し,その適用した時点より複合チック頻度に顕著な低減を認めたのでその治療過程を報告する。主なる行動療法の技法として負の集中練習,ハビット・リバーサルおよびセルフ・モニタリングを採択した。これら技法により患者のチック頻度は遅延した薬剤の効果とあいまって治療終結時には治療前の約1/19に低減し今もその頻度は維持されている。前2者の行動療法の技法はその操作において対立する印象を受けるが,患者の症状の成り立ちが強迫障害のそれと類似していたため,患者の葛藤に基づく緊張の緩和にも役立った。現在患者は日常性の支障からほぼ解放されているが,今なおチック頻度は完全な消去に至っているわけでなく,また薬剤の中断によりチック頻度に一時僅かな増大が認められたことから,やはり患者は脳内ドーパミソ系に機能障害を有し,そのため行動療法の治療的奏効に限界を来たしたことが示唆された。以上の治療過程を報告する中で,混在する個々の治療的変数の効果に分析を試みる。
- 日本行動療法学会の論文
- 1990-03-31